研究課題
本研究では、共創的な授業支援を目的としたコミュニケーション「場」のリアルタイム可視化システムを開発するために、第1年度(平成27年度)は「場」の可視化技術の開発(研究項目1)とその神経科学的基盤の確立(研究項目2)を並行して進めた。研究項目1としての授業における集団的コミュニケーション「場」の時間的・空間的パターンの可視化では、授業現場の集団的コミュニケーションを対象とし、加速度センサのネットワークを用いて「場」を可視化する手法を確立した。具体的には、授業において教師と生徒の集団的かつ無意識的な身体運動(頷き運動を含む)の同調状態を計測し、その時間的推移を分析し可視化した。計測には、上半身の揺れに伴う加速度変化をリアルタイムに計測できる名札型の加速度センサネットワークを採用した。分析方法としては、教師と生徒間および生徒同士の間で、時系列データの相互相関関数を計算することで、インターパーソナルな身体運動の同調状態を位相関係の時間発展の観点から分析した。研究項目2としての「場」の可視化手法の神経科学的基盤を明確化では、授業を模したレクチャー課題を対象として、身体運動の同調状態と相関して賦活される脳部位を調査し、「場」と深くかかわる共感との関係や、それに基づく意欲や態度への影響を明らかにした。さらに身体運動の同調状態において脳活動もインターパーソナルに同調しているか否かを確認した。fMRIによる分析では、MRI内外の2人の被験者にビデオ会話装置を通じて対話させ、MRI内の被験者の脳活動を計測し、「場」の状態を反映する脳部位賦活と身体同調との相関の検証を進めた。NIRSによる分析では、頷きの生成/知覚処理を担う脳部位の活動を、リアルな教育現場で測定し、その身体同調との相関を検証した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目標は共創的な授業支援を目的としたコミュニケーション「場」のリアルタイム可視化システムを構築することであり、平成27年度は、1)授業における集団的コミュニケーション「場」の時間的パターンを可視化すること、および、2)脳計測の併用によって本研究が提案する「場」の可視化手法を神経科学的に根拠づけるための基盤を確立することに成功した。その結果、おおむね想定どおりの成果を達成することができた。
平成28年度は、1)前年度の研究成果である授業における集団的コミュニケーション「場」の時間的パターンの計測手法を空間的パターンの可視化に拡張すること、および、2)脳計測の併用によって本研究が提案する「場」の可視化手法を神経科学的に根拠づけることの2項目を完了させる。これによって最終年度における、「場」の情報をリアルタイムに教師に表現できる共創的な授業支援システムの構築につなげる予定である。
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