研究課題/領域番号 |
15H01777
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研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
能城 修一 国立研究開発法人森林総合研究所, 木材加工・特性研究領域, チーム長 (30343792)
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研究分担者 |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 特招研究員 (10272527)
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 研究部考古研究系, 准教授 (30456636)
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70292448)
佐々木 由香 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (70642057)
鈴木 三男 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (80111483)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物遺体 / 植物資源 / 縄文時代 / 食糧管理 / 植物移入 |
研究実績の概要 |
福井県西部に位置する鳥浜貝塚において縄文時代草創期~前期の植物利用を明らかにした。この貝塚において多数の層準で放射性炭素年代測定を行い、年代値が得られた堆積物資料を用いて花粉分析と大型植物化石分析から植生分布を復元した。 鳥浜貝塚の周辺の植生は6つの植生期をへて変遷していた。下位より、約14,000~13,200 cal BPのコナラ亜属とブナを主とする落葉広葉樹林期、約11,600 cal BP前後のブナ林にスギが混生する時期、約11,500~8700 cal BPのコナラ亜属林にクリが多数混生する時期、約8700~7100 cal BPのスギ林の優占とエノキ属‐ムクノキ属樹木の拡大期、約7100~5700 cal BPのアカガシ亜属樹木の拡大期、約5700 cal BP以降のクリが優勢な時期である。 クリは草創期末以降に杭などとして木材が利用されるようになり、早期前葉には周辺丘陵にクリを多く混生する落葉広葉樹林が形成された。ウルシの花粉は草創期の約13,200 cal BPおよび約12,600 cal BPから出土し、アサの花粉は約10,500 cal BPの早期前葉から出現し、両種が貝塚周辺に生育していた可能性を指摘した。ウルシは中国原産、アサはユーラシア原産とされており、草創期から早期前葉には両種が日本列島に将来されていたことを示唆した。 一方、鳥浜貝塚周辺における人類の活動の証拠は、草創期から早期にかけては少なく、その頃の鳥浜貝塚はヒシの採集活動や漁撈などの生業の場にすぎないとする意見もある。しかし、クリは現在ブナやミズナラなどが優占する森林中に混生するのみであることから、草創期から早期におけるクリの多い林は人為的に作りだされた可能性が考えられた。一方、晩氷期における気候環境は現在とは大きく異なるため、クリが優占する森林が存在した可能性も否定できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に通りに縄文時代草創期から前期の植物遺体の検討を推進している。一部、鳥浜貝塚の堆積物資料のように、発掘調査から長い年月がたった堆積物資料においては、経年変化によって種実遺体の状態が悪化していて、種実遺体の同定が十分にはできなった資料もあった。しかし、関東地方を中心として縄文時代早期から前期の新たな資料も研究対象とすることができている。その結果、これまでほとんど解明されていなかった縄文時代早期の集落周辺の植物資源の様相が把握できつつあり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは縄文時代早期でも後葉の時期の資料を研究対象とすることが多かったので、より古い時期の資料を探索して分析する予定である。また調査地域も関東地方を中心としていたので、他の地方における資料の探索にも努力する。
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