研究課題/領域番号 |
15H01788
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 健次 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60197415)
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研究分担者 |
千田 浩一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20323123)
植原 啓介 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (30286629)
盛武 敬 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (50450432)
松本 佳宣 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60252318)
長谷川 有史 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70404879)
松野 裕 日本大学, 理工学部, 准教授 (70534220)
土屋 兼一 科学警察研究所, 法科学第二部, 主任研究官 (90447920)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境監視 / 放射線計測 / 放射線テロ / 減災 / 河川情報 |
研究実績の概要 |
2年目の平成28年度は、初年度の3グループでの成果を統合し、実際の環境測定を実施、測定結果の可視化も含め、その有用性と可能性についての検討を進めた。 監視G1と減災G2が中心となり、高濃度粉塵かつ低放射線場として、北九州の木材取扱い企業の製造現場で環境測定を実施、モバイル測定によりこれまで気付くことが無かった高濃度粉塵発生場所を特定するなど、作業環境測定への新たな有用性を確認した。実験に先立ち、実装G3は、道路や工場近隣など局所的に粒子密度の高い場所のPM2.5データと位置情報の同時計測を可能にするため、PM2.5のセンサモジュールとタブレットソフトウェアを開発,タブレット端末に記録されたGPSデータに紐付いたPM2.5の測定値をインターネット経由で取得することで、地図上でのPM2.5データの可視化を実現した。 併行して、原子力災害に着目、放射線影響評価に関するシナリオ策定のための初期検討等を行った。特に医療被曝に着目、災害医療トリアージに資するX線撮影装置を開発、医療情報システムによる被曝線量管理に関する研究成果や医療従事者の水晶体被曝評価に関する成果を英科学誌等に発表した。また、主催するCBRNE災害医療対応セミナー等において、早期検出・情報共有のための放射線センサの有効利用法を検討、実災害時と共に災害教育分野における同センサ活用の可能性も示唆された。さらに、放射線測定シミュレーターUSOTOPEを学生実習で活用し、実際の放射線計測器の取扱いの習熟に向け仕様を洗練させると共に、警察、消防、海上保安庁の現場隊員の意見に基づき、テロを含む災害訓練用デバイスとしての利便性向上に向け改良を重ねた。 一方、市民、行政、専門家の連携が必要となる水害情報にも対象を拡大、河川の水位計専門家と共に、河川水流の可視化による一般市民への防災情報提供のあり方にも取り組み始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3グループの共同作業により実企業での環境測定を実施、その効果や問題点を洗い出すなど、計画された検討事項に着実に取り組んだ。実測定による実験を通して、今後のモバイル測定領域の広範囲化や、特定部位での長時間測定(トレンドの把握)への端緒を開くことができるなど、多くの可能性が得られている。 測定実験と並行して、熊本県水俣市では地元の高校と連携し、市民による環境計測の可能性とその情報提供方法についても検討を継続するなど、市民・行政・専門家の連携を実現するための検討が進んでいる。 各グループとも、研究成果を国内外の会議や研究会にて報告しており、一部は投稿論文としても発表した。さらに年度末の3月1日には、環境測定の実施結果や個々の途中成果を3グループ間で共有すると共に有識者の意見を求めるために、「2017年システム安全学ワークショップ」を電通大で主催、成果の共有と参加者との議論を通して、今後の研究活動への有益な意見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度には3グループが共同で、PM2.5汚染の深刻な地域での観測やその情報の活用について、さらに放射線テロへの対応訓練等やや大規模な場でモバイル放射線検出器(ポケットガイガー)、モバイルPM計、放射線測定シミュレーター(USOTOPE)などの効果を確認、その有効活用を目指して問題点の解決策を検討する。 監視G1と減災G2では、環境情報の市民~専門家~行政間での共有と意思決定への活用について検討する。実装G3では、引き続きモニタリング結果をIoT技術を用いて可視化する方法に取り組む。数値で表示しても興味を持たない一般市民向けには、アートという形で目に見えないデータを表現する手法を発案し、2017年夏にはプロトタイプを完成させる。
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