研究課題
本研究計画は、自律型海上プラットフォームのウェーブグライダー(Liquid Robotics Inc.)を利用した離島火山観測システムを開発し、2013年11月から活発な活動が続く東京都の離島の西之島火山の観測を実施し、その実用性を評価するものである。本システムには火山監視に必要な、画像撮影用カメラ、空中及び水中での音波測定用の空振計とハイドロフォン、山体崩落等による津波発生の検知用のGPS波浪計を装備し、またリアルタイム監視のために、空振計、ハイドロフォン及び波浪計のデータを衛星通信で継続的に伝送する機能を持つ。今年度は2017年12月1日から12月13日までの期間、西之島周辺での観測・調査を行なった。この調査では、12月4日早朝から8日午前10時頃までの4日間に西之島火口を中心とする半径5 kmの円周軌道を5周して、映像観察及び水中・空中音波観測を実施した。タイムラプスカメラによる映像撮影は周回軌道上にあった12月4日早朝から8日午前中まで続けられた。カメラは可視光カメラであるため画像が見られるのは昼間だけであり、平均すると島をはっきり捉えられるのは1日に10時間以下であった。映像観察中の4日14時頃から日没までの17時頃まで、火口からの噴気活動を捉えた。噴気活動は連続的ではなくかなり断続的な活動であり、噴気の高さは最大で500 m程度と眺望された。一方、空振観測のための2台の空振計記録は、1日から10日までの期間、衛星経由で取得された。両方の空振計に記録されたシグナルの有無を検証するため、4-20 Hzのバンドパスフィルターをかけた後の記録で相関解析を行った。結果は、4日14時から19時45分の期間で相関パターンが見られた。それ以外では2日にも微弱なシグナルが得られた。特に4日14時からの相関パターンについては、カメラによる噴気活動が認められた期間に対応する。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画は、自律型海上プラットフォームのウェーブグライダー(Liquid Robotics Inc.)を利用した離島火山観測システムを開発し、2013年11月から活発な活動が続く東京都の離島の西之島火山の観測を実施し、その実用性を評価するものである。観測システムは計画通り、2015年には開発と製作を終了し、2016年10月に西之島火山近海において試験観測を実施し、ほぼ設計通りにシステムが機能することを確認している。2017年12月には、西之島火山近海での13日間の観測・調査を実施し、観測期間中の12月4日午後14時から発生した火口付近の噴気活動を捉えることに成功した。西之島の火山活動は、2017年4月20日に再噴火した後、1ヶ月毎の海上自衛隊の航空撮影観測によれば、8月半ばまでは活発な噴火活動が確認されていたが、9月以降は噴火の形跡は見られないと報告されていた。一方で、4月20日の噴火活動により、気象庁による入山規制が為され、近傍での観測は制限されていた。12月の本観測はこのような常用の中での実施となり、本観測システムが目指す完全無人の自律観測が実現されたことになる。
今年度12月に実施した離島火山観測システムを用いた西之島火山近海での観測・調査では、観測期間中の12月4日午後14時から発生した火口付近の噴気活動を捉えることに成功した。西之島の火山活動は、2017年4月20日に1年半振りに再噴火した後、1ヶ月毎の海上自衛隊の航空撮影観測によれば、8月半ばまでは活発な噴火活動が確認されていたが、9月以降は噴火の形跡は見られないと報告されていた。一方で、4月20日の噴火活動により、気象庁による入山規制が為され、近傍での観測は制限されていた。12月の西之島近海での本観測はこのような入山規制中の実施であり、本観測システムの開発動機でもあった完全無人の自律観測が遺憾なく発揮できたことになる。また、4日間の西之島を周回中に少なくとも3時間は噴気活動があったことが観測されたが、これは偶然に確認されたとは考えにくく、恐らくこのような活動が4月の噴火活動後も断続的に継続していたと推測される。今後の課題としては、更に長期間の観測を試み、その実行能力の評価を行う。また、当初より三体崩落に伴う火山性津波の発生が予測されていたが、現在は噴火活動の沈静化に伴う山体内部の冷却が進行しており、益々その危険性が高まっていると考えられる。そのような状況に対応するため、津波観測のための音響モデムを装備した海底ベクトル津波計(Sugioka et al., 2014)とウェーブグライダーに搭載したGPS波浪計を用いたリアルタイム観測を実施する。また、今年度12月の観測でも火山活動の視認に必須であったタイムラプスカメラによる映像撮影については、Thuraya衛星経由での伝送可能となるための開発を行い、より実用性の高いシステムに完成させる。最終的には、気象庁と連携体制を整備し、防災、減災にも資するシステムとして機能することを目標としている。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 6件)
Scientific Reports
巻: - ページ: -
10.1038/s41598-018-21066-w
Science Advances
10.1126/sciadv.aao0219
Journal of Geophysical Research: Oceans
巻: 123 ページ: 40~52
10.1002/2017JC013488
JAMSTEC-R
巻: 26 ページ: 54-64
10.5918/jamstecr.26.54
Pure and Applied Geophysics
巻: 175 ページ: 1371~1385
10.1007/s00024-017-1746-0
Science
巻: 358 ページ: 1593~1596
10.1126/science.aao3508
Earth, Planets and Space
巻: 69 ページ: N/A
10.1186/s40623-017-0747-7
10.1186/s40623-017-0703-6
10.1186/s40623-017-0608-4
Earth and Planetary Science Letters
巻: 462 ページ: 189~198
10.1016/j.epsl.2016.12.045