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2016 年度 実績報告書

線虫C. elegansの嗅覚機構を模倣した乳癌検知システムの研究開発

研究課題

研究課題/領域番号 15H01804
研究機関九州大学

研究代表者

都甲 潔  九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50136529)

研究分担者 前原 喜彦  九州大学, 医学研究院, 教授 (80165662)
内田 誠一  九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (70315125)
二ノ宮 裕三  九州大学, 味覚・嗅覚センサ研究開発センター, 学術研究員 (50076048)
松井 利郎  九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード癌検知 / 嗅覚 / 匂い / バイオマーカ / 簡易迅速・超高感度計測
研究実績の概要

バイオマーカの特定を行うために,コントロール研究参加者の尿サンプルを収集した.また,乳癌細胞と乳由来線維芽細胞を用いて培養液を作製した.その結果,乳癌細胞株培養液中より,正常線維芽細胞株培養液中にはほとんど存在しない特徴的な難揮発性化合物をGC-MS 分析により同定することに成功した.このバイオマーカ候補物質は,既存のヘッドスペース回収法では見出されていなかった物質である.加えて,それら化合物が乳癌患者由来の尿においても検出可能であり,正常者(乳癌検査陰性)由来の尿においては,検出されない(あるいは,極微量)ことを見出した.
次に癌探知犬を用いた実験については,27年度に引き続き,培養細胞培養液において癌(乳癌および大腸癌細胞株)と正常(線維芽細胞株)の違いの判断が可能であることを再確認すると同時に,幾つかの候補物質を入れた呼気バックでの検証も試みた.
さらに画像処理による線虫の走化性の定量化を行った.画像データから走化性指数を算出し,実際の目算に近似するシステムを構築した.線虫の行動を撮像し,動画像解析によって線虫の行動を定量化した.その結果,目視の行動観察と比較して同等程度の定量化を実現できた(マクロ走化性).また,動画で撮影したことで目視では困難であった細かな走化性指数の経過情報(ミクロ走化性)を得ることに成功した.
乳癌のバイオマーカ候補を検知する化学受容体として,難揮発性化合物に親和性が高い苦味受容体ファミリーに着目した.25種類のヒト苦味受容体再構築系の確立を試みた.その結果,既知の苦味分子に応答を示し,再構築系が機能することが明らかになった.
高感度センシングデバイスの開発では,SPR免疫センサを用い,尿中低分子バイオマーカに関して,HVA(小児癌や皮膚癌のバイオマーカ)の検出に成功した.加えて,上記バイオマーカ候補物質の抗体作製に取り掛かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の研究課題である①前向き臨床試験, ②生理学的な解析および原因物質(バイオマーカ)の特定,③走化性の数値化,④匂い受容体を発現させた培養細胞系を用いたセンシング,⑤超高感度センシングデバイスの開発について,課題毎に進捗に差異はあるものの,最終目的のバイオマーカの同定とセンシングデバイスの開発についてはほぼ成功しつつあり,加えて,走化性の数値化については完成を見た.また,学会・研究会における発表も順調に行われている.生物嗅覚については汎用性を高めるため線虫C.elegansに限定せず,ヒトよりはるかに嗅覚感度の高いイヌ(癌検知犬)の嗅覚も利用し,結果をGC-MS分析と併用することで,研究の成功を期した.特に28年度得たバイオマーカ候補物質は癌という遺伝子変異を匂い成分により捉えた最初の知見であると考えられる.

今後の研究の推進方策

28年度に続き,生物の嗅覚機構を利用するのみならず,GC分析も並行して行うことで候補化合物の絞り込みを行い,尿検体も増やすことで,尿中の乳癌バイオマーカの確定を行う.28年度見出した候補物質のモノクローナル抗体を作製し,SPRセンサでの高感度検出を可能とする.以上の研究を行うことで,癌細胞由来の匂いを検出するセンシングデバイスを開発する.また必要な特許戦略も策定する.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 動画像解析による線虫の走化性定量的評価2017

    • 著者名/発表者名
      前田恵佑,内田誠一,野寄朋彦,小野寺 武,都甲 潔
    • 雑誌名

      信学技報

      巻: 116(435) ページ: 5-8

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] カメラ画像解析による線虫の走化性定量的評価2016

    • 著者名/発表者名
      前田恵佑,内田誠一,野寄朋彦,小野寺 武,都甲 潔
    • 雑誌名

      電気学会研究会資料CHS = The papers of technical meeting on "chemical sensor"

      巻: IEE Japan 2016(18-31) ページ: 12-18

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 動画像解析による線虫の走化性定量的評価2017

    • 著者名/発表者名
      前田恵佑,内田誠一,野寄朋彦,小野寺 武,都甲 潔
    • 学会等名
      MEとバイオサイバネティックス研究会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      2017-01-27
  • [学会発表] Biochemical Sensors for senses of taste and smell2017

    • 著者名/発表者名
      Kiyoshi Toko
    • 学会等名
      5th Bioscience and Biotechnology International Symposium
    • 発表場所
      横浜市
    • 年月日
      2017-01-11
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 味と匂いの可視化2016

    • 著者名/発表者名
      都甲 潔
    • 学会等名
      電子情報技術部会 次世代エレクトロニクス分科会 講演会
    • 発表場所
      東京都千代田区
    • 年月日
      2016-12-19
    • 招待講演
  • [学会発表] Detection of Homovanillic Acid in Model of Human Urine Using Surface Plasmon Resonance Immunosensor2016

    • 著者名/発表者名
      Tomohiko Noyori, Takuya Eda, Takeshi Onodera, Kiyoshi Toko
    • 学会等名
      Bio4Apps 2016
    • 発表場所
      Gold Coast,Australia
    • 年月日
      2016-12-15
    • 国際学会
  • [学会発表] 表面プラズモン共鳴センサを用いた疑似尿中ホモバニリン酸の検出2016

    • 著者名/発表者名
      野寄朋彦,枝田拓也,小野寺 武,都甲 潔
    • 学会等名
      平成28年度電気・情報関係学会九州支部連合大会(第69回連合大会)
    • 発表場所
      宮崎市
    • 年月日
      2016-09-29
  • [学会発表] がんの匂いの特徴に関する研究2016

    • 著者名/発表者名
      園田英人、杉山雅彦、 中島雄一郎、大垣吉平、佐伯浩司、沖 英次、前原喜彦
    • 学会等名
      第71回日本消化器外科学会
    • 発表場所
      徳島市
    • 年月日
      2016-07-15
  • [学会発表] カメラ画像解析による線虫の走化性定量的評価2016

    • 著者名/発表者名
      前田恵佑,内田誠一,野寄朋彦,小野寺 武,都甲 潔
    • 学会等名
      ケミカルセンサ研究会2016
    • 発表場所
      金沢市
    • 年月日
      2016-06-30

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公開日: 2018-01-16  

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