研究課題/領域番号 |
15H01807
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丸山 厚 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (40190566)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂質膜 / ベシクルーシート転移 / 自立応答性 / くし型共重合体 / 高分子電解質複合体 / 時限応答 |
研究実績の概要 |
1.脂質シート形成に不可欠である親水性のデキストラン側鎖に注目し、グラフト率の異なるPAA-g-Dex (PDx : xはデキストランのグラフト率(mol%)) を合成した。PD8、PD10、PD13はE5存在下においてリポソームを脂質シートへと展開した。一方でPD6とPD26ではシートへの展開効果は示されなかった。効果的なベシクル・シート転移には、適切なグラフト率が必要であることがわかった。脂質シートの経時的な安定性を評価したところ、いずれのPAA-g-Dexとも脂質シートを100 %保持したのちに、PD8では約2時間、PD10では約3時間、PD13では約24時間でそれぞれ小胞に復帰した。すなわち、グラフト率を制御することによって脂質シートから小胞への時限応答を制御できた。 2.E5との複合体形成をpH応答的に制御するために様々な酸解離定数 (pKa) をもつ共重合体を合成した。酸塩基滴定によりPAA-g-PEG (PP) のpKaが9.2、Gly-PAA-g-PEG (GPP) のpKaが7.8、Ser-PAA-g-PEG (SPP) の pKaが7.0であることを確認した。これらの共重合体を用いてpH依存的な脂質膜形態を調査したところ、塩基性pHから中性pHへの変化において、各共重合体のpKaを境にしてリポソームから脂質シートへの転移が観察された。これは、共重合体がpKaを境にしてプロトン化し、E5と複合化することで脂質シートを形成したと考えられる。さらに共重合体の構造によらず、中性pHから酸性pHへの変化において、脂質シートからリポソームへの転移が観察された。これはE5がpKaを境にしてプロトン化し、共重合体との相互作用が弱くなったことで小胞へ復帰したと推測される。したがって、共重合体とペプチドのpKaに応じた脂質膜構造のpH応答制御が可能であることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成高分子により生体高分子の高次構造形成を制御し、機能を高める手法を、系統的に展開してきた。昨年まで、核酸酵素、核酸コンピューティングなどの核酸機能を顕著に高める合成高分子の構築に成功した。本年度は、ペプチドや生体膜の構造機能制御に概念の展開を図れることを確認した。さらに、生体高分子の構造・機能を自律的に制御する分子システムの基本概念の実証し、pH応答や時限応答する脂質膜デバイスの創成を実現した。本研究の概念を核酸、ペプチドそして脂質膜に展開しており、計画通りに進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
生体高分子構造の制御に必要な高分子構造・特性を抽出し、より機能が先鋭化した合成高分子の設計法を確立する。また、広範な刺激や環境因子に対して自立応答性する分子システムの構築を進める。また、核酸、ペプチドおよび脂質膜の構造安定化と機能強化に関わる機構をさらに明確にする必要があり、そのための検討を推進する。一方で、これらのシステムの生体環境における機能性を検証し、医療デバイスとしての可能性追求する。
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