研究実績の概要 |
脊髄損傷後の回復過程における神経ネットワーク再編について、PETなどを用いて解析し、側坐核が運動関連領域と綿密に連携することを見いだし、これを論文化した(Suzuki M, et al., Cerebral Cortex. 2020)。このような神経回路の結合性に加えて、それぞれのノードにおける神経伝達の分子基盤を明らかにすることは、可塑的な神経編成の神経基盤を明らかにする上で極めて重要である。これまでに我々は、ドーパミンD1,D2受容体やセロトニン5-HT1B受容体などのタンパク質の細胞質から細胞膜への移動(トランスロケーション)を司り、うつ病の病態発現に深く関与していることが報告されるp11がサルの側坐核や前脳基底部のアセチルコリン神経に特異的に存在していること明らかにした。今年度は、霊長類のp11の発現に対し抑制効果のある配列のもつsiRNAを見いだし、Tet-offで発現制御できるベクターを作製し、カニクイザルの腎臓由来の細胞であるJTC-12細胞で効果を確認した。さらに、in vivoでの実験を行うために、このsiRNAを組み込んだAAVベクターを作製した(AAVベクターの作製は生理学研究所のウイルスベクター開発室の小林憲太博士に委託)。 AAVベクターを側坐核、前脳基底部に局所投与する実験を行うために、MRIとCT画像を組み合わせ、前脳基底部に正確に局所投与する方法を開発した。また実際に一頭のニホンザルにGFP組み込んだAAVベクターを投与した。現在、発現の様子や投与部位からの神経投射について免疫組織化学染色を行っている。 p11のshRNAをサルの局所へ注入した後の脳機能への影響を明らかにするために、サルの頭蓋骨にリバーシブルに装着可能なMRI用のRFコイルを開発した。また、このコイルを一頭のニホンザルに埋め込み、麻酔下の安静時の機能的MRIの撮像に成功した。
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