研究課題/領域番号 |
15H01828
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
征矢 英昭 筑波大学, 体育系, 教授 (50221346)
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研究分担者 |
McHugh Thomas 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (50553731)
功刀 浩 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第三部, 部長 (40234471)
大石 久史 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30375513)
岡本 正洋 筑波大学, 体育系, 助教 (30726617)
松井 崇 筑波大学, 体育系, 助教 (80725549)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動 / 認知機能 / 意欲 / fMRI / DREADDシステム |
研究実績の概要 |
これまで、運動が海馬機能を高めるメカニズムとして、複数の神経可塑性調節因子(アンドロゲン、BDNF、IGF-1)の関与を明らかにしてきたが、それらに共通する分子神経機構の総合的解明には至っていない。最近、低強度運動ならびに高強度インターバルトレーニングが海馬のドーパミン(DA)濃度を高めることを確認した。腹側被蓋野(VTA)から側坐核、前頭皮質、海馬に投射するDA神経系は意欲・認知を司ることから、この活性化を通して意欲を高めながら運動することが認知機能向上の必要条件となる可能性がある。今年度は3つの研究プロジェクトの内、プロジェクト1と2を実施した。プロジェクト1では、低強度運動がDA神経系の活性や海馬のDA受容体発現を高めるか検討した。成熟したWistar系雄性ラットに30分間の一過的な低強度運動(分速10 m/min)を課したところ、VTAのDA神経が活性することを、免疫蛍光組織化学染色法によるDA神経とc-fosタンパク質の二重染色法により明らかにした。さらに、6週間の低強度運動トレーニングで、ラットの海馬DA受容体、特にD1様受容体の一種であるD5受容体のタンパク質発現量が高まることを明らかにした。 プロジェクト2では、一過性の低強度運動が海馬歯状回特異的な機能であるパターン分離能(似て非なるものの識別能力)に及ぼす影響を高解像fMRIにより検討した。運動習慣のない健常若齢者30名に対して、事前に最高酸素摂取量(VO2peak)を測定し、個人ごとに30%VO2peakに相当する運動強度を決定したのち、10分間の低強度運動を課した。パターン分離課題はfMRI内にて実施した。同一被験者の運動または安静直後の課題成績を比較したところ、仮説通り、運動によりパターン分離課題の成績が向上することが明らかになった。現在、海外研究協力者のYassa助教(カリファルニア大アーバイン校)と共同してfMRIデータを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、動物実験から低強度運動時のDA神経系の活性化について基盤的な情報を得るとともに、ヒトでも低強度運動により海馬機能が高まる結果を得ることができた。これらの研究成果は投稿準備中であり、計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、動物実験より、低強度運動が海馬に投射するVTAのDA神経を活性化すること、また、ヒトでも海馬歯状回特異的なパターン分離能を十分に高めることがわかった。この研究成果を基にして、プロジェクト1では、Chemogeneticな神経活動操作法であるDREADDシステムを用いて、VTAから海馬に投射するDA神経のみを抑制した動物を作出し、運動効果の変容を検討する。プロジェクト2では、健常高齢者に一過性及び長期運動介入の効果を検討していく。さらに、プロジェクト3を開始し、精神疾患モデル動物への運動効果の検討に加えて、国立精神神経研究所の功刀部長と共同し、健常若齢成人で得られた効果がうつ病患者でも得られるかを検討する予定である。
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