研究課題/領域番号 |
15H01830
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
能勢 博 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40128715)
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研究分担者 |
樋口 京一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20173156)
上條 義一郎 和歌山県立医科大学, みらい医療推進センター, 准教授 (40372510)
谷口 俊一郎 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60117166)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 要介護 / 熱中症 |
研究実績の概要 |
従来から、我々は、健常中高年者を対象に「インターナル速歩」は、体力向上、生活習慣病の症状改善に効果があること、さらに、インターバル速歩に乳製品摂取を併用することで、その効果を亢進するだけでなく、体温調節能を改善し、熱中症を予防することを報告してきた。 今回は、さらに、踏み込んで、生活習慣病「患者」を対象にインターバル速歩+乳製品摂取の生活習慣病の「治療」における有効性、暑熱耐性の改善効果を個体・遺伝子レベルで検証する。そのための大規模研究体制を確立することを目的とする。 そのために、H27年度は、まず、携帯端末対応型の携帯型運動量測定装置の開発をオムロン・ヘルスケアと共同で行った。この装置は従来型と比較し、小型、軽量、低電力消費量、安価であるばかりか、PC端末だけでなくiPhoneでも使用可能である。これらの性能によって、より若い世代を対象にインターバル速歩の普及が可能になった。 さらに、現場で発汗能を測定するための携帯型発汗計の開発を行った。従来型は、カプセル換気法と呼ばれるもので、皮膚表面上にカプセルを装着し、その中に乾燥空気を流しこみ、排気中の空気の温湿度から発汗量を連続測定するものであった。しかし、この方法は換気するためのポンプ、流量計が必要で、現場で用いるには装置が大きく汎用性がなかった。そこで、カプセルを皮膚表面に接する下部に温湿度計を装着し、上位には一定量のシリカゲルを充填した。これによって、皮膚表面から蒸発する汗は下位から上位コンパートメント方向に拡散するので、発汗量の比例した温湿度が測定できる。実際、個体レベルでこの方法とカプセル換気法で測定した発汗量はよく一致した。 以上、フィールドで運動量、体温調節能を測定する装置の開発は順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) 携帯端末対応型の携帯型運動量測定装置の開発: 当初、目標としていた機器のプロトタイプはほぼ完成し「i-Walk Pro」 として市販されている。一方、消費者から、インターバル速歩時の速歩とゆっくり歩きの切り替えるための音量を大きくして欲しい、更に価格を低下してほしいとの要望がある、現在、それらの要望に対する解決に向けて準備をすすめている。一方、最近、Apple社から販売された「iーPhone6」は、3軸加速度計、気圧計がすでに搭載されており、これらの機能を利用して、直接、インターバル速歩のための体力測定、トレーニング中のエネルギー消費量の測定するアプリ、さらにサーバーコンピューターにデータを転送し、遠隔型個別運動処方を受けられるアプリを開発している。 2) 携帯型発汗計の開発:当初、目標としていたシリカゲル発汗計のプロトタイプは既に完成している。現在、ゴールドスタンダードである換気カプセル型とのデータの整合性を向上するための形状、温湿度センサーの改良を行っている。その結果、下部の温湿度測定コンパートメントにミクロファンを設置して空気を攪拌して湿度の均一化をはかること、温湿度センサーを低湿度測定領域の感受性の高いものに置き換えることで、カプセル換気型と高い整合性を持った装置の開発に成功した。 3) 運動量から核心温度の上昇度を推定するロジックの開発:核心温の上昇に対する発汗速度の感受性から体温調節能の評価が可能になる。現在、皮膚温から核心温を推定する装置が開発されているが、皮膚を暖めるための電源を必要とするので、大型でフィールドで運動中に使用することはできない。そこで、運動量から産熱量を推定し、体比熱から核心温の上昇度を推定するロジックを考案した。現在、その妥当性を検証中である。 以上、研究は当初の計画以上に進展していると、判定できる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 高血圧・糖尿病患者における「インターバル速歩+乳製品摂取」の効果: 当初、高血圧症、糖尿病患者、別々に、「インターバル速歩+乳製品摂取」が、それぞれの疾患の症状と体温調節能に与える効果を検証する予定であったが、それぞれ単独の症状をもつ被験者を確保するのが困難であることから併発している被験者を対象とすることにした。30名の被験者を対象に、人工気候室内で、体力、循環器機能、体温調節機能を測定後、介入群と対照群に無作為にわけ、それぞれ5ヶ月間のインターバル速歩を実施させ、その効果を両群間で比較する。インターバル速歩+乳製品摂取群では、対照群に比べ、体力、高血圧・高血糖症状、体温調節能のすべてがより改善することが期待できる。 2) フィールド研究への応用: H27年度の成果にもとづき、フィールドでより大勢を対象に「インターバル速歩+乳製品摂取」の効果判定を実施する。すなわち、携帯端末対応型携帯運動量測定装置によって負荷漸増ステップアップ歩行によって体力測定を行い、その際、携帯型発汗計によって発汗能を同時測定する。その際、最大運動量から持久力、運動量と発汗量の関係から体温調節能を評価する。これらの結果を携帯端末からサーバーに転送することによって、大勢の被験者を対象に「インターバル速歩+乳製品摂取」が持久力と体温調節能に与える効果を検証することができる。それらの結果と、血液成分、炎症関連遺伝子のメチル化の測定結果を合わせて解析することで、「インターバル速歩+乳製品摂取」が、対照群に比べ生活習慣病の症状、体温調節能をより改善する、という仮説を立証する。
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