研究課題/領域番号 |
15H01833
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
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研究分担者 |
秋本 崇之 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00323460)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動 / トレーニング / 骨格筋適応 / 網羅的翻訳動態解析 / 共発現遺伝子ネットワーク解析 |
研究実績の概要 |
今年度の実績として、マウス運動モデルに加え、加齢マウスモデルであるSAMP8の骨格筋サンプルを用いて、転写・翻訳動態における網羅的解析を行った。さらに、骨格筋におけるシステムレベルでのネットワーク変化を捉えるために、共発現遺伝子ネットワーク解析(WGCNA)を行い、興味深い遺伝子の新機能を発見した。 WGCNAでは、発現パターンが強く相関する遺伝子どうしは一つの共発現遺伝子ネットワークを形成するという考えに基づいている。同一のネットワーク内の遺伝子群は似たような機能を有していることが多い。そのため、機能未知であった遺伝子も近傍の既知遺伝子の機能からその働きを推測することができる。このようなネットワークレベルでの解析を転写・翻訳動態データに行ったところ、翻訳動態特異的な(転写動態では見られない遺伝子間の)ネットワークを発見した。 そのうちの一つには、リボソーム複合体や翻訳に関わる遺伝子がエンリッチされていた。このネットワークを詳細に検討したところ、これまでリボソームや翻訳とは全く関係性が認められていない遺伝子も当該ネットワークに存在していること判明した(遺伝子x)。 また、昨年度老化とトレーニングの関連が認められたマイクロRNA(miRNA)について、その機能を解析するため骨格筋細胞にて当該miRNAを操作し、その表現型を検討した。遺伝子・タンパク質の発現はリアルタイムPCR、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等にて評価し、細胞機能と細胞内外の情報伝達経路の連動について解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、網羅的な翻訳動態解析が可能なリボソームプロファイリングと網羅的転写動態解析を活用して、マウスの運動モデルにおいて運動トレーニングに対する骨格筋適応のメカニズムを網羅的見知から解明することを目的としている。 前年度までの検討により、共発現遺伝子ネットワーク解析(WGCNA)によって推測された新規翻訳調節因子の遺伝子xは、翻訳を調節していることが示されたため、遺伝子xによる具体的な作用機序を解明するために、共免疫沈降などによって、相互作用するタンパク質の検出を行う。 また、WGCNAでは似た機能を有する遺伝子が同一ネットワークに集まる傾向が強いため、遺伝子xは翻訳を調節している新因子である可能性が示唆されたため、新規バイオマーカーとなりうる可能性とメカニズムの解明も期待できるため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子xの翻訳に関する機能を証明するために、培養細胞において遺伝子xをノックダウンさせ、遺伝子xの細胞増殖や翻訳動態への影響を検証する。具体的には、遺伝子xのノックダウンによって、細胞の増殖が著しく停滞することに加え、細胞内のグローバルなタンパク質産生量も顕著な減少を示すかどうかについて検証する。 また、老化とトレーニングの関連が認められたマイクロRNA(miRNA)について、動物個体における機能解析を引き続き行う。 さらに、4年目は最終年度にあたるため、研究成果の総括と発表および今後の研究の方針についての検討を進める。
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