本研究では、網羅的翻訳動態解析と網羅的転写動態解析を活用して、マウスの運動モデルや老化モデルにおける骨格筋の適応に関するメカニズムを網羅的に解明することを目的としていた。 本研究における今年度の研究実績としては、共発現遺伝子ネットワーク解析(WGCNA)によって見い出された翻訳作用機序に関連すると考えられるネットワーク群において、これまでは翻訳調節と関連がないと思われていた遺伝子に焦点をおき、CRISPR/Cas9システムを構築して、C2C12マウス骨格筋芽細胞において、これらの候補遺伝子をノックアウトした。しかし、これら個々の遺伝子のノックアウト細胞では、細胞増殖能やグローバルな翻訳動態への影響は認められなかった。 共発現遺伝子ネットワークでは、類似する機能を持つ遺伝子どうしや相互作用する遺伝子どうしによってネットワークが形成される傾向が強い。そのため、これまでに得られた候補遺伝子どうしの相互作用を検討するため、候補遺伝子の異なる組み合わせでのダブルノックアウトが翻訳動態に与える影響を検討した。候補遺伝子のうちで遺伝子xと遺伝子yは個々のノックアウトでは翻訳動態に影響を与えないが、xとyのダブルノックアウトでは、グローバルな翻訳量が顕著に減少した。そこで現在は、どのような作用機序によって遺伝子xと遺伝子yのダブルノックアウトが翻訳動態を変化させているのかについて検討を進めている。
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