研究課題/領域番号 |
15H01834
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
柿沼 志津子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 部長(任常) (20392219)
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研究分担者 |
尚 奕 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 研究員(任常) (50533189)
森岡 孝満 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 主幹研究員(定常) (70253961)
臺野 和広 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 主任研究員(定常) (90543299)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子ども被ばく / 放射線 / 発がん / ゲノム変異 |
研究実績の概要 |
我々は、これまでマウスやラットを用いて、放射線発がんリスクは感受性のウインドウと呼ぶ特定の発達時期の被ばくで高くなること、その時期はがんの種類によって異なること、さらに一部のがんにおいて放射線に特異的なゲノム損傷があることを報告してきた。本研究では、これらの研究で保存してきた世界的に見ても貴重なサンプルについてゲノムレベルで体系的に解析し、子ども被ばくに特徴的な発がん機構を明らかにすることを目的とする。 H28年度は、ガンマ線またはX線照射によって誘発したがんおよび自然発症したがんについて解析を進めた。 1)血液がん;Tリンパ腫(B6C3F1マウス)については、エクソーム解析を中心にゲノム解析を進め変異遺伝子を抽出した。Bリンパ腫(B6C3F1マウス)については、マウスに発生した脾臓腫大サンプルから免疫組織化学染色によってBリンパ腫を抽出し、一部のがんについてエクソーム解析を開始した。Pten-Creマウスの1週齢照射群のTリンパ腫について解析を行い、7週齢照射群と同様にタモキシフェン投与によるPtenの欠失と放射線照射がTリンパ腫発生に必須であること、Ptenアレルのコピー数解析から、対立アレルにゲノム欠失が必須であることが明らかになった。 2)固形がん;肝がんと肺がん(B6C3F1マウス)の病理組織解析により肝細胞がん及び肺腺がんを抽出した。肝がんについてはアレイCGH解析とLOH解析を行うと共に、エクソーム解析の為のDNA抽出を開始した。消化管がん(Mlh1マウス)については、病理組織解析を進めた。乳がん(SDラット)についてはホルモンレセプター発現によるタイプ分類を行った。また、乳がん保存サンプルから、癌部分のDNAを回収しアレイCGH解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
病理組織解析や免疫組織学的解析から、自然誘発がんと比較して血液がん(Tリンパ腫、Bリンパ腫)と固形がん(肝がん、肺がん、乳がん)において、放射線被ばくによってがんの発生時期が早期になる傾向が認められた。また、固形がんでは、がん組織の中にがん細胞以外の細胞も多く含まれるが、マイクロダイセクションによってがん細胞のみを回収することにより、ゲノム解析に適したDNAを回収できた。Tリンパ腫、Bリンパ腫の解析が予想より順調に進み、エクソーム解析から得られるデータの解析方法についても検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
血液がんおよび固形がんについて病理組織解析の継続し分子解析を進める。 1)血液がん;Tリンパ腫は、エクソーム解析のデータについて詳細に解析する。Bリンパ腫については、エクソーム解析を優先して進める。 2)固形がん;肝がん、肺がんおよび消化管がんについては、情報量の多いエクソーム解析を優先して進める。
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