研究課題/領域番号 |
15H01835
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
及川 英秋 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00185175)
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研究分担者 |
南 篤志 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40507191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生合成 / 天然物 |
研究実績の概要 |
Neosartorya fischeri からNFIA_41470, NFIA_55500, NFIA_62390の3個、; A. oryzae からAOR_1_1216074 の1個の合計4個の遺伝子を発現ベクターに組み込み、得られた形質転換体を培養し、NFIA_55500導入株から新規のC25テルペンsesterfisherol を単離構造決定した。またその修飾酵素の同時発現により、sesterfisheric acidが得られた。本物質は歪んだ8員環を含む特異な4環性骨格を持つため、その生合成には興味が持たれた。生産株の培養液に[1-13C,2H3]CH3CO2Naを投与して調製し、得られた標識化合物の13C NMR解析、また両水素ともヒドリドシフトしているC12位に関しては、別途調製した組換え環化酵素NfSSと、この位置を特異的に標識したGGPP (C20)を用いた酵素反応生成物の1H NMR解析で、その標識位置を特定した。その結果、この環化酵素は、全くC-C結合の転移を起こさず、5回のヒドリドシフトを経由して骨格を形成することを突き止めた。機能既知および未知の遺伝子を使った系統樹解析を行ったところ、fusicoccin型環化生成物を与える酵素群と、sesterfisherol型生成物を与える酵素群は、きれいに分かれることが明らかになった。従って環化モードと酵素が属するクレードとは密接な関係があることがわかった。NfSSによる環化は2環性、3環性、4環性と進むが、そのカチオン中間体に対応する天然物が多数見つかっていることから、NfSSが属する酵素群は、これら天然物の骨格構築に関与する可能性を提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
優れた学生が参加してくれ、標的遺伝子の絞り込み、麹菌異種発現系による機能解析、大腸菌で大量発現させた組換え酵素による興味深い酵素の機能解析に成功した。また共同研究者による貴重な実験結果の提供を受けたことは大きい。
特にC25テルペン環化酵素の異種発現、ゲノムマイニングは、未知遺伝子が多数存在することから、新規骨格を有する分子、修飾酵素含めた生合成後期の遺伝子発現による生産が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きC25テルペンのゲノムマイニングを続け、本手法の有用性を確認するとともに、客観的な発現の成功確率を求める。配列相同性に基づいた新規化合物探索法を開発すると同時に、全生合成遺伝子の発現による新規物質の探索を行う。 ustiloxinとのものと類似した生合成遺伝子クラスターは、ほかの糸状菌ゲノム上に多数みつかることから、同様の生合成経路を持つリボソーム依存性ペプチドを網羅的に生産できる可能性が出てきた。まずは、類似のペプチドの中では代表的な天然物であるustiloxinの全生合成遺伝子の機能解析を達成する。さらにこれらペプチド群の骨格構築で最重要となる新規酸化酵素の立体構造の解明を含めた詳細な機能解析を行う。 さらに次年度からは、短期間の遺伝子発現で生産される植物病原菌の毒素の単離、構造決定を行うべく、共同研究者と遺伝子発現および物質生産を確認する。この発現情報を基に物質生産を試みる予定である。
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