研究課題/領域番号 |
15H01836
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 郁朗 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (40305496)
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研究分担者 |
岡田 正弘 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (40377792)
淡川 孝義 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80609834)
松田 侑大 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (10720766) [辞退]
森 貴裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60734564)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生合成 / 遺伝子 / 酵素 / 反応機構 / 物質生産 |
研究実績の概要 |
複雑骨格天然物の生合成反応機構の解明と物質生産を目的とする。具体的には、最近申請者の研究室でその生合成遺伝子クラスターの取得に成功した、(放線菌が生産する強力なタンパクリン酸化酵素(PKC)活性化作用を示す発癌プロモーターのテレオシジンB、難培養性海綿共生菌が生産する強力なタンパク脱リン酸化酵素阻害剤であるカリクリンA、および、その他複雑骨格天然物をとりあげ、その生合成マシナリーの解明と物質生産系の構築をめざす。生合成の鍵となる段階を触媒する酵素については、X線結晶構造解析により、酵素反応の立体構造基盤を明らかにするとともに、結晶構造に基づく酵素触媒機能の拡張と最適化をめざす。また、これら遺伝子を異種発現系に再構成することにより、構造多様性の拡大と物質生産系の構築を実現する。 テレオシジンの分子骨格骨格において、インドールに異なる長さのプレニル基を、通常の反応とは異なるリバースプレニレーションで付加させる二つの酵素の結晶構造を得ることに成功し、そのメカニズムを解明した。また、二つの酵素の構造を比較した結果、プレニル基の長さを制御するメカニズムも明らかにした。プレニル化は天然物の活性を向上させるために重要な反応として知られているため、この成果は生体触媒によるドラッグデザインへの貢献、例えば、有機合成では困難な反応などに本酵素を用いることが期待される。 これ以外にも、9員環ジラクトン骨格を持ち、強力な電子伝達系阻害活性を有する抗生物質アンチマイシンや、様々な生物活性を示すカルボリンアルカロイドなど、複雑骨格天然物の生合成マシナリーの詳細や酵素反応機構の立体構造基盤の解明にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに順調に進捗し、論文発表もこなしている。
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今後の研究の推進方策 |
テレオシジンBについては、非リボソーム型ペプチド合成酵素 TleAとP450酸化酵素TleBの構造機能解析を行う。L-tryptophanとL-valineから、9員環インドラクタムを構築する非リボソーム型ペプチド合成酵素TleAと、ペプチド鎖の酸化的環化を触媒する新奇なP450酸化酵素TleBについても同様に、大腸菌に異種発現した組み替え精製酵素を用いて、in vitro精密機能解析とX線結晶構造解析に着手する。シアノバクテリアLyngbya majusculaにおいてlyngbyatoxinの生合成に関わるホモログ酵素LtxA (NRPS) とLtxB (P450) については、既に大腸菌に異種発現した組み替え酵素のin vitro解析が報告されている。これを参考に、TleA (NRPS) についても、PCP-Rドメイン組み替え酵素などを構築して精密機能解析と結晶化を試みる。一方、酸化的環化によるインドール環のC-4位への環化反応を触媒するTleBについては、N-Me-L-Val-L-Trp-olのアナログ体なども基質として作用させ、基質および生成物特異性を精査する。両酵素とも、同様に、結晶構造に基づく改変型酵素を作出し、酵素触媒機能の拡張と最適化をはかる。その他、複雑骨格天然物生合成マシナリーについても、精密機能解析を行う。
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