研究課題
本課題では、糖鎖の生体機能解明のため、野生型と糖鎖遺伝子改変型の細胞やマウスを研究材料として、最新の解析技術を用いた比較グライコプロテオーム解析による糖転移酵素の標的タンパク質の同定と糖鎖構造解析を行った。グライコプロテオミクス技術・IGOT法ではN型糖鎖キャリア分子と付加位置を同定することが出来る。そこで、LacdiNAc(タイプ I)構造を合成するB3GALNT2に着目し、発現細胞からLacdiNAc結合レクチンを用いたIGOT法によりキャリア分子を同定した。さらに、KD実験によりLacdiNAc構造がN型糖鎖上に存在すること、KOマウスの胎児での組織構造異常を明らかにした。次に、新規グライコプロテオミクス技術(GR法)では、糖ペプチドの質量および保持時間を使用し、MS2を必要とせずに糖ペプチド上の糖鎖構造が解析できる。そこで、HL-60細胞におけるポリラクトサミン(pLN)糖鎖のキャリア分子の同定を試みた。糖ペプチドを親水性相互作用クロマトグラフィー分画した試料を分析した結果、pLN糖鎖が高親水性画分に濃縮された。HL-60細胞では31個のpLNキャリアタンパク質群が同定され、それらはシグナル伝達、受容体、細胞移動および細胞接着などの機能に関連する分子を含むことが明らかとなった。さらに、コンドロイチン硫酸の生合成に関わるCSGalNAcT1(T1)とCSGalNAcT2(T2)のダブルノックアウトマウス(DKO)を作製し、表現型解析を行った。DKOは呼吸不全による胎生致死であった。軟骨特異的DKOでは、四肢が極端に短縮していた。T2単独KOは正常であったが、DKOでT1単独KOよりシビアな表現型を示したことから、T2も軟骨形成に機能していることが明らかとなった。以上、本課題での技術開発と各種解析により、糖タンパク質糖鎖とその生物機能について重要な知見が得られた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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