研究課題/領域番号 |
15H01846
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
定藤 規弘 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 教授 (00273003)
|
研究分担者 |
安梅 勅江 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20201907)
田邊 宏樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (20414021)
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
飯高 哲也 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 教授 (70324366)
小坂 浩隆 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (70401966)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 機能的MRI / 二個体同時計測 / 見つめ合い / 共同注意 / ネットワーク解析 / 発達 / 睡眠 / 自己顔認識 |
研究実績の概要 |
【相互主体性を介した共有プロセスの解明】アイコンタクトをしている2者の神経活動を同時計測し、視線を介して二者が単一の「我々」を構成する際に小脳と辺縁系ミラーシステムが重要であることを明らかにした。協力行動において側頭頭頂接合部後部を含む心の理論システムが関与することを明らかにした。【社会能力の神経基盤解明】自己顔認識の神経基盤の発達に右下頭頂小葉が重要であることを明らかにした。自分の行為と相手の反応の間の因果関係(社会的随伴性)認知に係る神経基盤が初期視覚野から頭頂葉を経由して外側前頭前野に至る階層構造を形成していることが判明した。【自閉スペクトラム症研究】自閉症スペクトラムでは自身の身体に対する気付きが変化していること、その神経基盤が外側後頭側頭皮質にあることを明らかにした。さらに安静時fMRIデータを用いて、ASD群において視床皮質間の機能的結合が増強していることを明らかにした。【簡易計測による発達諸相評価】乳児の覚醒度が高いほど、見つめ合いから共同注意が惹起されやすいことを明らかにした。さらに生後18ヶ月、30ヶ月、42ヶ月時点での社会能力を母子の相互作用から「かかわり指標」を用いて定量化し、睡眠時間と入眠時刻が社会能力発達に影響することを明らかにした。このことにより睡眠が社会能力の発達に重要な役割を果たすことが明らかとなった。【二者間の神経ネットワーク解析のための技術的検討】学習過程におけるネットワーク構造のダイナミックな変化を捉えるために、eigenvector centrality mappingを運動学習に適用して記憶痕跡の可視化を行った。その結果、記憶痕跡の生成される領域は学習手法に依存すること、特にトップダウンの努力を要する場合に実行機能ネットワークが関与することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「自他相同性に始まり向社会行動に至る社会能力の発達は、相互主体性を介した共有による学習過程である」との仮説を証明することを目的とする観点から、着実に実験が進行している。1.二個体相互作用の神経ネットワークモデルについては、複数の機能的MRI実験が平行して走っている。2個体間のネットワーク評価方法としてのEigenvector centrality mappingについては、一個体レベルでの有用性を学習課題において検証が完了し、さらにICA analysisと組み合わせることによる有用性を確認したことから、引き続き2個体同時計測データへ適用する。相互主体性を介した共有プロセスの解明に関して、アイコンタクトの即時性に関する神経基盤を明らかにする実験が複数進行中であり、さらに共同作業を課題とする2個体同時計測fMRI実験も進めている。7テスラMRIへのマルチバンド法導入は完了しており、既に機能的MRIを遂行している。さらに拡散強調画像取得のための調整が完了しており、社会能力を担う神経回路描出へ研究を展開する。2.社会能力の神経基盤についても複数の実験が進行している。3.強化学習システムとしての対面コミュニケーションの神経基盤解明については、他者との相互作用における自己効力感の効果を検証しつつある。4.簡易計測による発達諸相および疾患におけるネットワーク評価は、特に3.と関連して、ASD者を対象としたfMRI実験を積極的に展開する。5.安静時fMRIの解析手法は、2個体同時計測データの解析に重要であり、引き続き技術的検討を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
脳機能計測は順調にデータを積み重ねており、特に超高磁場MRI(7T)との連携を強めていく方向で推進する。データ解析に於いても2個体を1つのネットワークとして解析する手法の準備が進みつつあり、実験データ取得と解析の両輪で推進する。この成果を、疾患診断ならびに行動発達計測へと結びつける方策を要する。疾患研究については既存のデータベースを用いたメタ解析に成功しており、この方向性も維持する。精神疾患の病態生理についてのモデルについて、精神科領域(小坂・飯高))ならびに認知発達科学領域(板倉)の専門家と密接に議論を積み重ねて、神経基盤の明確な定量的行動指標の確立へと展開する。
|