研究実績の概要 |
本研究は、日本国内外の機関や個人コレクターが所蔵する日本染織コレクション蒐集の経緯や来歴、構成内容を網羅的に調査し、近代以前は蒐集されることのなかった日本染織が古美術品としての価値観を形成していく過程を考察するものである。平成28年度の調査計画に従って、以下の調査を行った。 海外調査については、ワシントン・ワシントン大学染織美術館にて、同館に所蔵の日本染織コレクション18件を調査(11月1,2日)。また、同館で開催された日本染織の展覧会に関するシンポジウムに参加した(11月4,5日)。ニューヨーク・メトロポリタン美術館にて、同館に所蔵の日本染織コレクション66件を調査した(29年2月23,24,27,28日,3月1日)。 日本国内調査については、名古屋・松坂屋美術館にて、同館に所蔵の日本染織コレクション91件を調査した。(8月17~19日/29年2月1~3日)。また、同館に所蔵されるコレクションの旧所蔵者に関する研究発表会を開催した(8月17日)。神奈川・女子美術大学美術館にて、同機関に所蔵の日本染織コレクション66件を調査した(9月6,7日/29年2月15,16日)。 以上の調査により、これまで知られていなかったワシントン大学染織美術館における戦前の日本染織コレクションの全容を得た。また、メトロポリタン美術館に所蔵される古美術商・野村正治郎が売却した染織コレクションについても、これまでの研究者が未調査であった袈裟類を含む全容を調査できた。国内調査では、研究目的の1つである、女子美術大学美術館に所蔵される長尾美術館旧蔵のコレクションについては、裂類を除いて調査が完了した。松坂屋美術館については、洋画家・岡田三郎助旧蔵コレクションの調査が9割方調査を終えたが、次年度にその他のコレクターによる戦前のコレクションを引き続き調査する予定である。
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