研究課題/領域番号 |
15H01899
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
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研究分担者 |
増田 隆一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192748)
手塚 薫 北海学園大学, 人文学部, 教授 (40222145)
内山 幸子 東海大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20548739)
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 講師 (60452546)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 千島アイヌ / 千島列島 / カムチャツカ半島 / 考古学 / 先史学 / 遺伝学 |
研究実績の概要 |
千島アイヌ関係の物質文化コレクションの基礎調査を東京・函館で(2015年5月9日-14日),サハリン出土内耳土器の調査を稚内で(2015年5月30日-6月2日),カムチャツカ半島出土内耳土器の調査をストックホルムで実施した(2015年11月30日-12月7日)。また,ロシア科学アカデミー東北学際研究所(マガダン市)において,カムチャツカ半島出土動物骨・石器の調査を実施したが(2016年2月28日-3月6日),資料保管機関の事情で調査期間が十分に確保できなかったため予定していた動物骨の同定およびリスト作成を終了することができなかった。そのため,予算の繰越(翌債)をおこなったうえで再度調査を実施し(2017年3月7日-14日),動物骨の同定・リスト化を完了した。 野外調査は,カムチャツカ国立大・カムチャツカ地方統合博物館と共同で夏期に実施した(2015年8月7日~9月4日)。カムチャツカ半島東南部のリストヴェンニッチナヤ湾において千島アイヌの時期の遺跡を調査し,内耳土器を多数発見することができたが,動物骨はほとんど回収できなかった。したがって,カムチャツカ半島出土動物骨については,上記のマガダン市に保管されている資料が極めて重要になってくる。カムチャツカ郷土博物館では,半島各地から出土した石器のうち,黒曜石製石器について剥離速度の分析に必要な表面の痕跡(フラクチャーウイング)に関する情報を顕微鏡をもちいて収集した。今後の解析により,石器を作る際に利用されたハンマーの材質・打撃方法が明らかとなり,鉄器の普及度の理解に役立てられることが期待される。 このほか北大植物園に保管されている占守島出土イヌ遺体の形態学的特徴を検討したうえで,DNA分析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カムチャツカ半島における野外調査による資料回収,既存の千島アイヌ関係のコレクション群の調査,シュムシュ島出土イヌ遺体のDNA分析など,予定していた研究は予定通り実施できた。唯一,終了することができなかったマガダン保管のカムチャツカ出土動物骨資料についても,翌年に同定・リスト化を完了し,論文作成に必要なデータ収集を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
カムチャツカ半島の野外調査で回収した遺物については,放射性炭素年代測定により年代を決定する。本野外調査の結果は,カムチャツカ半島における千島アイヌの居住域の変化を解明するうえで非常に重要な意義をい有している。ただし,カムチャツカ半島では動物骨資料を回収することができなかったため,マガダンに保管されている動物骨(海洋リザーバー効果を避けるため草食動物を用いる)の年代を決定したうえで組成を検討する。また,北千島における動物遺体の回収を目的として占守島で発掘調査を行う。 マガダン保管の動物骨についてヒグマ・イヌについてDNA分析を実施し,アミノ酸による同定方法も試行する。カムチャツカ出土石器については,製作に利用されている道具の同定およびその遺跡間比較を行う。
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