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2015 年度 実績報告書

消費者取引に伴うリテール決済サービス法制の構築

研究課題

研究課題/領域番号 15H01927
研究機関名古屋大学

研究代表者

千葉 恵美子  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (70113587)

研究分担者 横溝 大  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00293332)
角田 美穂子  一橋大学, 法学研究科, 教授 (10316903)
岡田 仁志  国立情報学研究所, 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構, 准教授 (10333543)
林 秀弥  名古屋大学, 法学研究科, 教授 (30364037)
町村 泰貴  北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60199726)
川地 宏行  明治大学, 法学部, 教授 (90262831)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2020-03-31
キーワード決済 / クレジットカード / 電子マネー / 仮想通貨 / フィンテック / 割賦販売法 / 資金決済法 / 消費者
研究実績の概要

2015年度は、①決済システムをめぐる病理現象である「サクラ」サイト詐欺商法における決済代行者問題の分析を通じて、消費者取引に関連するリテール決済に関連して、消費者被害がどのように発生しているのかを解明すること、②クレジットカード決済を素材として、リテール決済サービス市場を規律するための「分析枠組」を検討することを中心に研究を実施した。
2015年度は、上記①については、消費者苦情・相談情報を集約・分析しておられる国民生活センター相談情報部相談第2課、上記②については、長年金融政策を担当されてきた行政官、リテール決済関連のコンサルタントおよび研究者に講師を務めていただき、決済システムの産業構造およびICTの発展とともに電子決済について新しい決済ネットワークが開発されている現状とその問題点について、新たな知見を得た。
上記の研究活動を通じて、上記①については、研究代表を務める千葉恵美子が「キャッシュレス決済の拡大と今後の消費者法制の在り方」について、現時点の問題状況を分析し、その成果を公表した。また、上記②については、病理的現象にとらわれ利用者を保護するというパターナリスティックな考え方を取るのではなくて、リテール決済の取引に関与した主体にどのような権利があり、どのような責任があるのかを学際的に検討を加えた上で、さらに消費者取引であることで特別な規律を考える必要があるかを検討することにした。以上の視点から、決済の対象となる代金債務を発生させる商品・役務の供給契約・決済のための契約構造・決済ネットワークの3つの構成要素にわけた上で、これらを全体として正常に機能させるための法律構成をさらに考察することにした。
今後の学際的研究を推進するために「リテール決済研究会」を組織し、継続的に研究会を開催することにし、本年度は4回研究会を開催した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、クレジットカード決済・電子マネー決済など消費者取引に直結したリテール決済システムを法的に分析し、これまで消費者法と決済法に分断されて検討されてきた法制度を横断的・包括的に規律するための立法政策のあり方、および、電子取引である点をどのように立法政策に取り込むか検討することを目的としている。
クレジットカード・電子マネー・仮想通貨などの決済サービスは、キャッシュレス決済を実現するための次世代型の社会インフラであり、金融とICTが融合したフィンテック領域における問題の一つである。
このため、研究を推進するにあたって、リテール決済として広く利用されている口座振替、証券決済についても取り上げ、他方で、消費者取引によく利用されているクレジットカード決済、電子マネー決済、収納代行との比較をし、さらに、これからの新しい決済システムとして仮想通貨による決済も取り上げることにした。現在、仮想通貨に使われているブロックチェーン技術を取り入れた仕組みについて実証実験がさかんに行われていることから、今後の研究の推進にあたって研究対象に含めることにした。
上記研究対象の拡大に伴い、連携研究者として10名の方に本研究に参加していただくことにした。

今後の研究の推進方策

1.比較法研究を行う。 英米法・EU法・ドイツ国内法・フランス国内法について、決済システムの市場構造を需要側の市場構造と供給側の市場構造の二つの観点から法的な分析を加え、各国の決済システムの現状と法制度を把握するとともに、制度改革の方向として、どのようなバリエーションがあるかについて検討する。
2.理論的に検討を加える。 決済システムの利害関係者間は契約・約款によって結びつけられているが、契約の相対効によって契約の効力は切断されること、すべての取引条件について決済システムの利害関係者が交渉を行うことはできないことから、全体を決済「ネットワーク」として捉え、多様な契約主体の利害を調整する理論枠組を検討する。また、決済システムの安定性・予測可能性の見地からは、社会インフラとしての公益性があること、電子決済であることを考慮して、これらの点が上記理論枠組にどのような影響があるのかを解明する。
3.立法政策の在り方について検討する。 日本の決済市場の特色を考慮した上で、決済サービスの市場において決済ネットワークとして完結している点と消費者取引の決済手段として安定的で健全な決済システムである点を同時に達成する「公法・私法協働モデル」を提示する。併せて、クレジットカード決済については、国際ブランドの登場によって、電子商取引の決済手段としてクロスボーダー取引に利用されることから、消費者法と決済法が融合した法規制について国際私法の観点からも検討する。

  • 研究成果

    (41件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (26件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (9件)

  • [国際共同研究] マックスプランク外国民事法・国際私法研究所/マックスプランク租税法・金融研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      マックスプランク外国民事法・国際私法研究所/マックスプランク租税法・金融研究所
  • [国際共同研究] ポワチエ大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      ポワチエ大学
  • [雑誌論文] 預貯金口座に対する振込みによる弁済の効果(3・完)―フランスにおける近年の議論を参考にして―2016

    • 著者名/発表者名
      深川裕佳
    • 雑誌名

      東洋法学

      巻: 59(3) ページ: 177-246

  • [雑誌論文] 預貯金口座に対する振込みによる弁済の効果(2)―フランスにおける近年の議論を参考にして―2016

    • 著者名/発表者名
      深川裕佳
    • 雑誌名

      東洋法学

      巻: 59(2) ページ: 291-354

  • [雑誌論文] EU法における「脆弱な消費者」について2016

    • 著者名/発表者名
      ノルベルト・ライヒ著 角田美穂子・訳
    • 雑誌名

      一橋法学

      巻: 15巻2号 ページ: 印刷中

  • [雑誌論文] 競業者による複数の不法行為を巡る客観的併合管轄と準拠法2016

    • 著者名/発表者名
      嶋拓哉
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1490 ページ: 139-142

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 《論点解説 消費者被害救済の法律と実務(4)》 共通義務確認の訴えの訴訟物と既判力(3)2016

    • 著者名/発表者名
      町村泰貴
    • 雑誌名

      現代消費者法

      巻: 30 ページ: 108-110

  • [雑誌論文] 標準必須特許のライセンスをめぐる競争政策上の問題点 : 中国におけるクアルコム事件を素材として2016

    • 著者名/発表者名
      林秀弥、田中悟、鄭双石
    • 雑誌名

      国際商事法務

      巻: 44巻3号 ページ: 349-358

    • 国際共著
  • [雑誌論文] [独禁法判例研究会報告] 新潟タクシー事件2016

    • 著者名/発表者名
      林秀弥
    • 雑誌名

      公正取引

      巻: 783 ページ: 70-78

  • [雑誌論文] JASRAC CASE-Exclusionary Effects of Blanket Copyright License by a Dominant Firm-2016

    • 著者名/発表者名
      林秀弥
    • 雑誌名

      AIPPI

      巻: 41巻1号 ページ: 3-23

  • [雑誌論文] 標準必須特許と競争法に関するEU司法裁判所判決2016

    • 著者名/発表者名
      林秀弥
    • 雑誌名

      EU法研究

      巻: 1号 ページ: 3-23

  • [雑誌論文] 「インターネット上の有料メール交換サイトを営む会社のサイト利用料金詐取による不法行為責任が認められた事例(東京高判平成25・6・19」2015

    • 著者名/発表者名
      千葉恵美子
    • 雑誌名

      私法判例リマークス

      巻: 50号 ページ: 42-45

  • [雑誌論文] キャッシュレス決済の拡大と今後の消費者法制の在り方2015

    • 著者名/発表者名
      千葉恵美子
    • 雑誌名

      消費者法ニュース

      巻: 105号 ページ: 70-73

  • [雑誌論文] 預貯金口座に対する振込みによる弁済の効果(1)―フランスにおける近年の議論を参考にして―2015

    • 著者名/発表者名
      深川裕佳
    • 雑誌名

      東洋法学

      巻: 59(1) ページ: 119-221

  • [雑誌論文] 投資信託の販売・勧誘に関する私法上の問題2015

    • 著者名/発表者名
      角田美穂子
    • 雑誌名

      金融法務事情

      巻: 2023 ページ: 48-56

  • [雑誌論文] 注目判例研究(2015年前期)取引2・東京高判(民22部)平27・1・26毎月分配型投資信託の販売・勧誘時の説明義務違反に基づく民事責任2015

    • 著者名/発表者名
      角田美穂子
    • 雑誌名

      現代民事判例研究会編・民事判例XI 2015年前期

      巻: 11 ページ: 86-90

  • [雑誌論文] 相続財産の構成を巡る法の適用関係2015

    • 著者名/発表者名
      嶋拓哉
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1485 ページ: 139-142

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「取引における自己決定権の法的保護―金融商品取引を中心に」2015

    • 著者名/発表者名
      角田美穂子
    • 雑誌名

      『不法行為法の立法的課題』別冊NBL

      巻: 155号 ページ: 145-161

  • [雑誌論文] 《論点解説 消費者被害救済の法律と実務(1)》 消費者裁判手続特例法の意義と問題点2015

    • 著者名/発表者名
      町村泰貴
    • 雑誌名

      現代消費者法

      巻: 27 ページ: 106-110

  • [雑誌論文] 《論点解説 消費者被害救済の法律と実務(2)》 共通義務確認の訴えの訴訟物と既判力(1)2015

    • 著者名/発表者名
      町村泰貴
    • 雑誌名

      現代消費者法

      巻: 28 ページ: 127-130

  • [雑誌論文] 《論点解説 消費者被害救済の法律と実務(3)》 共通義務確認の訴えの訴訟物と既判力(2)2015

    • 著者名/発表者名
      町村泰貴
    • 雑誌名

      現代消費者法

      巻: 29 ページ: 106-109

  • [雑誌論文] 電波法制と競争(一):我が国の周波数割当政策と欧米からの示唆2015

    • 著者名/発表者名
      林秀弥、飯塚留美、柴崎哲也
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 262 ページ: 39-100

  • [雑誌論文] 技術標準と標準必須特許の法と経済学2015

    • 著者名/発表者名
      田中悟、林秀弥
    • 雑誌名

      パテント

      巻: 68巻8号 ページ: 88-98

  • [雑誌論文] 二面市場とプラットフォーム:その法的課題2015

    • 著者名/発表者名
      林秀弥
    • 雑誌名

      法とコンピュータ

      巻: 33 ページ: 7-19

  • [雑誌論文] 無線通信分野の標準必須特許の権利行使に関する中国競争法による規制─クアルコム社による市場支配的地位の濫用事件を中心に─2015

    • 著者名/発表者名
      鄭双石、林秀弥
    • 雑誌名

      知財管理

      巻: 65巻9号 ページ: 1155-1167

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 包括徴収の人為性と「排除」行為該当性:JASRAC事件最高裁判決[最高裁第三小法廷平成27.4.28判決]2015

    • 著者名/発表者名
      林秀弥
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1485 ページ: 112-115

  • [雑誌論文] 情報流通基盤に対する競争法および事業法上の規制 : 最近の展開-JASRAC最高裁判決および平成27年電気通信事業法等改正2015

    • 著者名/発表者名
      林秀弥
    • 雑誌名

      Law & technology

      巻: 69 ページ: 31-39

  • [雑誌論文] 経済法と農協改革2015

    • 著者名/発表者名
      林秀弥、西澤雅道
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 264 ページ: 353-400

  • [学会発表] 投資信託の勧誘・販売に関する私法上の問題2015

    • 著者名/発表者名
      角田美穂子
    • 学会等名
      日本金融法学会
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-10-12 – 2015-10-12
  • [学会発表] 財産関係訴訟の国際裁判管轄2015

    • 著者名/発表者名
      横溝大
    • 学会等名
      韓日国際私法学会間交流協定締結記念共同学術大会「日本法の観点からみた韓国の国際裁判管轄立法」
    • 発表場所
      中央大学校(ソウル,大韓民国)
    • 年月日
      2015-09-22 – 2015-09-22
  • [学会発表] キャッシュレス決済の拡大と今後の消費者法制の在り方2015

    • 著者名/発表者名
      千葉恵美子
    • 学会等名
      愛知県弁護士会シンポジウム「クレジット決済による消費者被害の現状と割賦販売法の見直しについて」
    • 発表場所
      愛知県弁護士会会館(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-06-27 – 2015-06-27
    • 招待講演
  • [学会発表] レギュレーションと国際私法2015

    • 著者名/発表者名
      横溝大
    • 学会等名
      国際私法学会第128回(2015年度)研究大会
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2015-06-07 – 2015-06-07
  • [図書] 解説 民法(債権法)改正のポイント2016

    • 著者名/発表者名
      角田美穂子,石川博康,大澤彩,加毛明,幡野弘樹,吉政知広
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      有斐閣
  • [図書] 民事法研究会2016

    • 著者名/発表者名
      町村泰貴=白井幸夫編
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      電子証拠の理論と実務
  • [図書] 破産法体系第3巻 破産の諸相2015

    • 著者名/発表者名
      竹下守夫=藤田耕三編,小松陽一郎,内田博久,杉山悦子,宮下正彦,山﨑栄一郎,野口宣大,村上正子,片山英二,米山朋宏,横溝 大,村松秀樹,山本和彦,林康司,中井康之,山本 淳,木内道祥,三森 仁,深山雅也,野村剛司,橋爪 隆,佐藤弘規
    • 総ページ数
      551(200-222)
    • 出版者
      青林書院
  • [図書] グローバル化と公法・私法関係の再編2015

    • 著者名/発表者名
      浅野有紀=原田大樹=藤谷武史=横溝 大 編著
    • 総ページ数
      384(268-281)
    • 出版者
      弘文堂
  • [図書] リーガルクエスト経済法 第2版2015

    • 著者名/発表者名
      泉水文雄,土佐和生、宮井雅明、林秀弥
    • 総ページ数
      438
    • 出版者
      有斐閣
  • [図書] オーラルヒストリー 電気通信事業法2015

    • 著者名/発表者名
      林秀弥・武智健二 編
    • 総ページ数
      302
    • 出版者
      勁草書房
  • [図書] 情報法概説2015

    • 著者名/発表者名
      曽我部真裕, 林秀弥, 栗田昌裕
    • 総ページ数
      420
    • 出版者
      弘文堂
  • [図書] 別冊NBL No.153 情報通信法制の論点分析2015

    • 著者名/発表者名
      堀部政男,石井夏生利,小向太郎,平野 晋,山口いつ子,井部ちふみ,若林亜理砂,林 秀弥,曽我部真裕,佐々木秀智,西土彰一郎,杉原周治,数永信徳
    • 総ページ数
      408(第2章)
    • 出版者
      商事法務
  • [図書] 新たな法規律と金融取引約款2015

    • 著者名/発表者名
      円谷峻=三林宏編, 円谷峻,長坂純,中村肇,椿久美子,工藤祐巌,平田厚,中山知己,川地宏行,中舎寛樹,三林宏
    • 総ページ数
      288(197-228)
    • 出版者
      成文堂

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公開日: 2017-01-06  

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