研究課題/領域番号 |
15H01930
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 利之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40214423)
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研究分担者 |
村山 武彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00212259)
嶋田 暁文 九州大学, 法学研究院, 准教授 (00380650)
阿部 昌樹 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (10244625)
北村 喜宣 上智大学, 法学部, 教授 (20214819)
名和田 是彦 法政大学, 法学部, 教授 (30164510)
礒崎 初仁 中央大学, 法学部, 教授 (40349212)
齋藤 純一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60205648)
内海 麻利 駒澤大学, 法学部, 教授 (60365533)
原島 良成 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (90433680)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 合意形成 / 公共政策 / 人口減少社会 / 経済縮小社会 / 空間利活用 / 自治行政単位 / 合意調達システム / 合意形成システム |
研究実績の概要 |
各メンバーは、本年度も、各自の役割分担と意識しつつ、演繹的アプローチと帰納的アプローチの双方から研究を進めた。 演繹的アプローチに基づく研究成果として、齋藤純一と嶋田暁文が共同して、理論枠組と概念についての整理を行った。また、齋藤純一は、さらに合意形成の規範的・理論的検討を深めた。具体的には、合意概念の定義、合意と合意形成または合意形成プロセスの区別、合意と同意、異議・意見表明などの関係、合意と決定の関係、合意と理由の関係および理由の類型、合意と現状との関係など、様々な点が整理されていった。各人がこうした共通理解を前提にしつつ、同時に、各人それぞれが指向する観点との異同を整理して、距離感を相互にはかっていったのは、共同研究の大きな実績である。こうした前提作業は、共同の成果物を得るための前提と考えている。また、金井利之は、戦後日本における国・自治体間の合意形成システムについて、総括的に展望を示した。嶋田暁文は、人口減少時代における合意形成にはさまざまなタイプがあるとして、それぞれの合意形成の内実の違いを論じた。 帰納的アプローチに基づいては、各メンバーがそれぞれに研究を深めていった。阿部昌樹は鳥取県内の一部事務組合と住民間の紛争という具体的事例を取り扱い、合意と訴訟の関係を考察していった。原島良成は函館市大間原発訴訟を取り上げ、抗告訴訟の原告適格と合意形成の関係を検討した。北村喜宣は、空き屋や相続問題など、民民間の合意形成ができない問題と行政の関係を分析した。内海麻利は、浦安市のある地区における地区計画に向かう住民間の合意を、いわば純粋事例的に研究を深めた。村山武彦は、まちづくりや商業施設に関する市町村を越える広域調整の合意形成と県の役割について、実証的に分析を行った。磯崎初仁は松沢・神奈川県政における政策決定にかかる合意形成について、具体的な事例に絞って検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由は大きく分けて2つある。 第1に、本年度予定していた、①調査の企画立案実施、②定例研究会の開催、③草稿執筆と検討、④『発展』段階の研究成果の公表という、4つの作業がおおむね順調に進捗したからである。①は、内海麻利によるフランス調査や、名和田是彦によるドイツ調査、原島良成の函館市調査などを挙げることができる。②については、2017年6月4日、10月1日、11月3日、12月3日、12月24日に定例研究会を開催した。③については、1月末までの第1次草稿提出を受けて、2018年2月24日に草稿に関する検討を行った。④について、後述の論文一覧に示されているように、各自がそれぞれに成果を発表している。昨年度にまして、研究メンバー間で相互に知見を深め、相互に調整を行うことができ、研究会として統一的・体系的な成果が見込めるようになってきた。 第2に、研究成果の出版に向けて、具体的な作業が進んだからである。上述の通り、法律文化社の編集者を交えて、草稿に関する検討会を開催し、出版に向けて様々な留意事項や要望事項についてコメントを受け、出版に向けて大きく前進した。但し、すべての草稿について2月24日に読み合わせおよび検討を行うことを計画していたが、自由闊達な意見交換や議論がなされたため、研究会で予定していた時間では足りなくなり、次年度当初(4月15日)に急遽、設定することになった点は、若干の遅延である。ともあれ、多忙な各メンバーが、実質的なエフォートを割いてもらうことが継続的にでき、草稿の執筆にまでこぎつけることができた。このまま、2018年度当初での最終稿のとりまとめができれば、研究成果を公刊した上で、広く社会にその成果を発信し、研究期間内にフィードバックすることができる。 以上の見通しが立ったことは、「おおむね順調に進展している」という評価に値するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、成果物としての単行本の出版に向けた作業を行う。2018年後半の公刊を目指す。上述の通り、前年度までの作業は順調に進捗している。但し、草稿の検討を行う研究会を前年度内にすべて終えることができなかった点は2018年度への積み残しであり、年度当初に、まずそのための検討研究会を行う必要がある。草稿の検討を終えた上で、連休明けをめどに最終稿のとりまとめを行うように、進捗管理を強化する予定である。 第2に、成果物のとりまとめに向けて、外部関係者からコメントをもらう機会を作ることを検討する。執筆および編集作業の進捗状況にもよるが、ある程度の原稿がまとまり、ゲラなどの編集作業が行われる段階になって、非公式な研究会または査読的な検討会を開催することを目指す。 第3に、研究成果が2018年後半に公刊されることを前提に、研究成果を公表し、社会に発信するための公開研究会または公開シンポジウムを企画する。特に、2017年度は各メンバー間の議論や、各メンバーの草稿執筆に力を振り向けるため、2015・16年度のような公開研究会を開催することは行わなかったので、最終成果物を踏まえての社会との対話は2018年度の大きな目標である。具体的には、外部研究者からのコメントを中心とする公開研究会とするか、メンバーの成果を発表する公開シンポジウムとするかを、年度当初に研究会で検討し、早期に企画立案をするものとする。そのうえで、2018年末ないし2019年頭に、こうした公開の社会的対話の機会を設ける。 第4に、社会に対する発信と、それによるフィードバックを受けて、4年間の共同研究の最終的な総括を行う。
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