研究課題/領域番号 |
15H01960
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 隆宏 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90229047)
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研究分担者 |
新宅 純二郎 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00216219)
大木 清弘 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (20611073)
矢野 正隆 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 助教 (80447375)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自動車産業 / 造船産業 / 一般機械産業 / 電子・電機産業 / 素材産業 / 鉄鋼産業 / アーカイブ |
研究実績の概要 |
本研究は日本企業、とりわけ貿易財企業の国内外の現場が、これまでどのような経路で能力構築努力を積み重ね、厳しいグローバル競争の中で存続してきたかについて、産業現場視点の「工場史」および「グローバル能力構築競争」という分析枠組・基本概念を用いつつ歴史的及・実証的な検討を加えることを主たる目的としている。この研究では、企業に属する個々の現場が、現場レベルの組織能力や競争力(物的生産性、製造品質、リードタイムなど)を高めることによって自らの存続、利益貢献、雇用維持などの目標を達成しようと切磋琢磨する能力構築競争の実態を明らかにすることに焦点を合わせている。とりわけこういった工場史研究をひとつの分野として確立するために、フィールドノートや現場資料などのアーカイブをつくり今後の多くの研究者のための基盤づくりを目指している。本年度は本研究の目的に基づき国内および海外の現場を訪問し、ヒアリングと企業の工場及び本社・事業部等の実地調査を行った。重機械班(自動車・一般機械産業班中心)は13回、電子・電機班は18回、素材班は8回行った。アーカイブ班は、これまでに収集された一般機械産業、電気・電子機械産業、化学・鉄鋼を中心とした装置産業などの各種製造現場の調査ノート、企業および工場の発行物その他の整理・目録作成を進めた。さらに輸送用機械産業については、生産現場に即した企業内部からの発掘資料の脈絡を明確にすべく、当該資料に通暁した元・企業人(生産管理担当者)への聞き取りも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は国内及び海外の現場を訪問し、工場・本社・事業部等の実地調査を行った。自動車部門では日本の自動車企業及び関係会社の国内工場と海外工場を訪問し各工場の能力構築と工場間展開及び本社の生産スタッフ部門の役割などについてインタビューを行った。具体的に国内のトヨタ、日産、デンソー善明工場を訪問し現場能力構築に関するインタビュー調査を行った。また海外調査として、米国進出した日本の自動車企業とタイ進出した日本の自動車企業の現地工場調査を行った。非輸送用機械部門では、豊田自動織機、木村鋳造所、シギヤ精機製作所の現地工場を訪問し、組織能力に関するヒアリング調査を実施した。電子・電機班では、電機産業と半導体装置産業の国内・海外工場を訪問し、国内と海外の分業体制および深層の現地化に関する調査を実施し、さらに高生産性を 達成している工場の組織能力に関するヒアリング調査を実施した。具体的に、パナソニック、ダイキン、オリンパス、村田製作所工場を訪問し、インタビュー調 査を実施した。また、中国に進出している日本企業の現地工場と韓国・タイ・マレーシアに進出している日本企業の現地工場に関する調査を実施した。素材班では、日本国内の製薬・化学・鉄鋼素材企業と海外の関連企業に対するヒアリング調査を実施した。具体的に、日立金属、GMB、京都機械工具、花王、ブリヂ ストン、中外製薬工業、JFE、西日本製鉄所工場に関する実地調査を実施した。アーカイブ班は前年度に継続して機械産業・プロセス素材産業に関連する資料の目 録を作成、素材産業に関連する国内、海外工場や海外工場調査のフィールドノートの収集資料に関するデータベース構築を行った。 こうしたフィールド調査の成果を活かし、研究成果の国際的な発信も積極的に行っている。図書出版、国際ジャーナルをはじめ多くの雑誌論文に投稿し、国際・ 国内学会への報告も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
【重機械班、自動車部門と非輸送用機械部門】前年度からの課題を継続しつつ、国内の自動車企業及び関係会社と非輸送用機械メーカーの各工場内部の能力構築と工場間展開、及び本社の生産スタッフ部門の役割などについて訪問調査を継続して実施する。また、海外の自動車企業及び関係会社と非輸送用機械メーカーの主要工場の調査を継続しつつ、国内工場と海外現地工場、国内からの知識移転と人材育成についての調査を継続し、成果を国際学会に発信する。【電子・電機 班】前年度からの課題を継続しつつ、国内と海外工場の能力構築事例を分析してその成果を発信する。また、継続して日系企業のアジア工場を訪問し、深層の現地化事例を動態的に分析し、国内工場と海外工場の間での分業と技術移転のプロセスについても継続研究を実施し、その成果を国際学会に発信する。【素材班】 前年度からの課題を継続しつつ、国内企業と海外企業の能力構築の比較のために日本と海外の鉄鋼およびケミカル素材メーカーの国内工場と海外工場の調査を実施し、問題解決と学習、知識蓄積のありかたについて比較調査を継続する。また、国内・海外工場経験者のオーラルヒストリーをデータベース化しつつ、その成果を国際学会(PICMETなど)に発信する。【アーカイブ班】前年度からの課題を継続しつつ、国内生産現場の調査ノート、企業および工場発行物の目録作成作業と工場管理経験者への聞き取り(資料解題作成の準備作業)、海外調査資料のデータベース作成作業を並行して行う。国内現場の諸資料の目録作成については、昨年度より重点課題としている化学・鉄鋼をはじめとした装置産業を完了させたのち、一般機械等の資料に着手する。
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