研究課題/領域番号 |
15H01963
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
日置 弘一郎 公立鳥取環境大学, 経営学部, 教授 (70114022)
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研究分担者 |
王 英燕 京都大学, 経営学研究科, 准教授 (10456759)
李 超 近畿大学, 経営学部, 講師 (10614646)
関 千里 愛知学院大学, 経営学部, 教授 (70434256)
波積 真理 熊本学園大学, 商学部, 教授 (80271443)
大木 裕子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (80350685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロデューサー / 産業集積 / 技能継承 / ブランド管理 |
研究実績の概要 |
産業集積におけるものづくり高度化が研究テーマであり、研究機関の三年を経て、多くの事例を集積しつつある。産業集積によってものづくりがおこなわれるのは大企業体制以前と以降で共通している。大企業が自分の内部に経営資源を集積してできるだけ自立した経営の様式をとるというモデルの以前と以降での類似が明確になってきた。大企業体制以前は、自社に不足する経営資源を外部に依存するというビジネスモデルが採用され、それが伝統産業に残存している。現在では経営資源が社会に潤沢に存在し、それを複数の企業で利用するビジネスモデルが出現し、最先端産業集積で検出されている。 両者を比較することによって、高度なものづくりがいかにして達成されるかを検討すると、技術の開発によって進歩するという産業クラスターの中心的関心は必ずしも妥当せず、技術開発の特定のフェイズについてのみ妥当することが明らかにされた。また、従業員の技能は集積によって高度化することは確認されたが、それが必ずしも商品として受け入れられるとは限らないという事例も多く見られた。仲間内の評価(ピア・レピュテーション)が行動原理として重要であることはシリコンバレーで確認されたが、それが仲間受けでしかない場合には過剰品質や不要な機能の衒示につながる。有効なものづくりに至るには、製品の有効な企画が必要となる。これを行う存在がクラスターの内外から調達できるかが決定的に重要であることが示された。 この存在をプロデューサーと名付け、個人のこともあれば企業の場合もあり、どのような機能を果たしているかについて、既存の経営学におけるイノベーションの理論を改変する可能性を示した。プロデューサーがクラスター外にいるという形態の事例も存在し、クラスター内企業連携でのビジネスモデルの多様性も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度までに多くの産業集積を見て、かなりの事例を集積した。この事例から判断される現象についての知見は多く仮説の形成に有効であり、明確な方向が示されている。今後は仮説に適合しないケースを追求することで、どこまで一般化が可能であるかの検討に移るが、全体的には有効な仮説が形成されていると判断できる。 先端的な産業集積との対応を見ることが残された課題であるが、現在の日本では産業クラスターとしての要件を備えた集積は少なく、伝統産業における事例の一般化によって類推することが可能であると考えている。その意味では順調な研究の進捗であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究をとりまとめる時期に来ているが、今年度中に成果報告を出版する予定であり、引き続き二冊目の可能性を探る。より一般化するためには先端技術集積についても調査する必要があるが、これを大規模におこなうことは今後の課題であるが、今年度はその可能性を探るためにパイロットスタディをおこなう。
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