研究課題
最終年度の2018年度は、①2016年に実施した質問紙調査(2016年首都圏調査)のデータ分析、②国勢調査・経済センサスのメッシュ統計と住宅土地統計調査の市区町村別統計の分析、③以上の分析結果にもとづく研究成果の公表、④最終報告書の作成を行った。明らかとなったのは、以下の諸点である。(1)1990年から2010年の間に東京圏の階級・階層構造は、旧中間階級が大幅に減少するとともに、技能・所得水準が中程度のマニュアル労働者が減少し、新中間階級とサービス産業の下層労働者が増加するという形で2極化の傾向を強めた。(2)こうした変化は空間構造の変化を伴っており、都心部では旧中間階級と低所得世帯が減少して、新中間階級と高所得世帯が増加したのに対して、周辺部ではサービス労働者と非正規労働者、低所得世帯が増加するというかたちで、空間的な分極化が進行した。(3)しかし、都心の南西方向では新中間階級比率と所得水準が高く、北東方向で労働者階級比率が高く所得水準が低いという、東西方向の分極化傾向は依然として維持されていた。(4)こうした空間的な分極化は意識の上での分極化を伴っており、高所得地域に住む人々は階層帰属意識が高く、格差を容認し所得再分配に反対する傾向を示すのに対して、低所得地域に住む人々は反対の傾向を示す。このことは、都市の分極化が住民の意識を分化させることを通じて、地域間の政治的対立を生み出す可能性を示唆している。(5)旧中間階級が減少し、非正規労働者が増加したことから、東京圏ではアンダークラス(パート主婦以外の非正規労働者)の大規模な集積がみられるようになったが、東京圏のアンダークラスは全国レベルでみた以上に、他の階級との所得格差が大きく、下層性が強い。また社会的に孤立する傾向、抑うつ傾向が強いなど、多くの問題を抱えており、今後の都市政策に大きな課題を投げかける存在となっている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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