研究課題/領域番号 |
15H01984
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北岡 明佳 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (70234234)
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研究分担者 |
新井 仁之 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (10175953)
栗木 一郎 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80282838)
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (20293847)
村上 郁也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60396166)
辻村 誠一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (10381154)
小池 千恵子 立命館大学, 薬学部, 准教授 (80342723)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 錯視 / 脳機能画像 / fMRI / 渦巻き錯視 / 色の恒常性 / 並置混色 / 色依存のフレーザー・ウィルコックス錯視 / 静止画が動いて見える錯視 |
研究実績の概要 |
渦巻き錯視(同心円が渦巻きに見える錯視)に関係する脳領域を調べるfMRI研究に着手し、数名のデータを取得した。データは解析中である。色の恒常性の研究としては、加算的色変換による色の恒常性と静脈錯視(静脈は灰色に近い肌色なのだが青く見える現象)の関係を調べてきたが、全画素は赤くないのにイチゴが赤く見える画像がネット上で人気を博したことを契機に、その画像を用いて6色のイチゴ画像を作成し、その反対色の加算による色の恒常性錯視画像を刺激とすることで、色の恒常性の閾値の測定を開始した。結果としては、相対的には赤く見える錯視の閾値が低かった。この結果を記憶色の効果ではないかと疑う研究者も多いと予想されることから、他の色のもの(たとえばバナナ)でも測定を行う必要がある。並置混色には2種類あり、加法混色と減法混色が区別されることをデモしたが、RGBを原色とした減法混色とCMYを原色とした加法混色のアルゴリズムを実現するに至り、同じRGB縞でも白に知覚される場合と黒に知覚される場合があることを、デモで実現した。これは、視覚系には加法混色的解釈と減法混色的解釈の2系統があることを示唆するもので、視覚研究において画期的なことと考えられる。色依存のフレーザー・ウィルコックス錯視は明るい条件下の錯視と暗い条件下での錯視は逆方向となる静止画が動いて見える錯視であることがわかっているが、明るい条件下で暗い条件下と同じ方向の錯視を引き起こす技法を発見した。この技法により、色依存のフレーザー・ウィルコックス錯視は単眼性であり、錯視の原発部位は網膜ではないかという仮説を強めた。しかし、この錯視をマウスが見えることを証明する行動系の確立には未だ至っておらず、ノックアウトマウスによる直接的な証明の実現は次年度に繰り越された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
錯視の脳機能画像研究は2012年度を最後に中断していたが、2016年度には再開することができた。一方、静止画が動いて見える錯視をマウスに見せるという試みは、予備実験段階から数年が経過した現時点で、見込みが立っているとは言えず、想定通りには進んでいない。ネコに静止画が動いて見える錯視が見えるという証拠を2014年に発表した時は証拠不十分を疑われたものだが、いくつか動かぬ証拠が増えてきたので、この方向は順調と言える。色の恒常性の定量的研究に着手したので、この方向の色の錯視の研究も順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きこのまま進めるが、色の恒常性の研究と色依存のフレーザー・ウィルコックス錯視の研究に色覚異常の観察者を含めることも検討する。fMRI研究は、渦巻き錯視の研究が一段落したら、これまで試みていない錯視を検討したい。これまで試みたのは、静止画が動いて見える錯視と現在調べている幾何学的錯視であるから、色の錯視あるいは明るさの錯視が有力である。マウスに錯視が見えることが証明できると、錯視に対する網膜の役割を明らかにする研究を組み立てられる可能性が大きいと思われるので、引き続き動物実験研究を進める。
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