研究分担者 |
新井 仁之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10175953)
栗木 一郎 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80282838)
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 教授 (20293847)
村上 郁也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60396166)
小池 千恵子 立命館大学, 薬学部, 教授 (80342723)
辻村 誠一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (10381154)
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研究実績の概要 |
本研究のテーマは錯視の研究である。現象的あるいは知覚心理学的アプローチは、大いに進捗した。具体的には、加算的色変換による色の錯視の研究において、その現象を包括的に説明できる原理として「ヒストグラム均等化」説を提唱した(Shapiro, Hedjar, Dixon and Kitaoka, 2018)。この考え方により、静脈が青く見える錯視を問題なく説明することができるようになった。 色依存のフレーザー・ウィルコックス錯視(Kitaoka, 2014)にも進捗が見られた。照明の強さだけでなく、色温度も重要な役割を果たしているらしいということがわかり、この錯視の網膜起源説を支持する知見となりつつある。 マウスに錯視が見えるという証拠があれば、ノックアウトマウスを用いて錯視に関係する遺伝子を特定できると考え、研究を進めてきているが、今年度は色依存ではないフレーザー・ウィルコックス錯視を刺激としたが、マウスに錯視が見えるという明確な証拠を得ることはできなかった。 脳機能研究について、運動残効という錯視を用いて、脳内で色と動きの信号の相互作用に関する研究を行なった。これまでの研究では、回転する縞模様(色/白黒)に平均12秒順応した後で順応と同じか逆方向に3秒間回転する縞(色/白黒)を検査刺激として示し脳活動を計測したところ、色に順応し白黒で検査した場合のみ顕著な脳活動が生じ、しかも通常の運動残効から予想されるのと逆の傾向を示した(任・栗木・松宮・塩入, 2017)。この原因を解明するため、順応を3秒、検査刺激を1秒に短縮した実験を行なったところ、通常予想される脳活動が生じた。さらに心理物理実験の結果を考慮すると、長い順応時間の時に計測された「通常と逆の脳活動」は、色の情報から「動き」の情報を抽出する神経情報処理の過程を捉えた可能性が示された。
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