大学教育の内容・水準を規定するのは単にカリキュラムや授業技術だけではなく、大学組織が教員と学生をどのように編成し、教育機能を発現させていくかが重要なカギであることが認識されてきた。 この研究では、①大学教育の組織形態とその構造・機能はどのように概念化することができ、また国際的にみればどのような特徴があるのか、②その中にどのような利害関係、ダイナミクスが働き、それが教育機能にどのような影響を与えているのか、そして③組織構造を改革するにはどのような可能性と条件があるのか、を解明することを目的とした。そのために、A.国際調査・皮革、B.日本における事例調査分析、C.大学・学部データの作成とその分析、の三領域での実証分析を行った。 その結果、以下の点を明らかにした。 1)日本の大学の組織構造は、アメリカのモデル、あるいはイギリス、大陸ヨーロッパのモデルとも大きく異なる。また特に大陸ヨーロッパにおいては1980年代から2000年代にかけて大きな変化があったのに対して、日本においては国立大学の法人化にかかわらず、基本的な組織原理に大きな変化がない。 2)それを背景として日本の大学教員の意識、行動は国際的にみても大きな特色がある。それを一言でいうなら、「学術原理主義」がまだ強い影響力を持っている点である。その結果として、教育・研究機能にも重要な特質が生じている。 3)2010年代に入って、教員の意識には重要な変化が生じているとみられ、特に中小規模大学においてそれが顕著であるが、一般的な大学の組織変化に及ぶにはまだ至っておらず、特に大規模大学での変化をどのように生じさせるかが課題となっている。
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