研究課題/領域番号 |
15H01993
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊田 進太郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70404324)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 助触媒 / 水素生成機構 / ナノシート / 1原子反応サイト |
研究実績の概要 |
光触媒反応における水素生成は、触媒表面上にナノサイズの金属粒子等を担持することで劇的に向上する。しかしながら、その反応機構については不明な点が多い。高効率の光触媒を開発するためには、それらの不明な点を解明し新しい設計概念を更新していく必要がある。そこで本年度は、光触媒反応における水素生成システムについて、実験と計算の両方のアプローチから詳細に検討した。具体的には、単原子Rh助触媒サイトをチタニアナノシートのチタンサイトに導入した光触媒を開発し、透過型電子顕微鏡を用いて、反応サイトの具体的な結晶構造を原子レベルで可視化した。このナノシートの光触媒活性を評価すると、未ドープのサンプルにくらべてRhドープのサンプルは5-10倍程度高い水素生成活性を示したことから、Rhがドープされた単原子サイトは水素生成の活性点になっていると考えられる。次にその構造を用いたDFT計算を行い、Rh単原子反応サイトでどのようなプロトンの還元吸着がおこるか調査した。その結果、Rh-HとO-Hの結合が表面にでき、さらに水素が結合している酸素とロジウムが結合を形成している吸着構造が最も安定であることがわかった。計算で最も安定な水素の還元吸着状態が明らかになったので、実験的にRh-HとO-Hの結合が形成されるか赤外分光法を用いて調査すると、それらの結合に対応するシグナルが検出された。またNMRを用いて分析したところ、Rh-Hの結合が存在することを示すスペクトルが得られた。Rh-Hの水素は溶液中のフリープロトンと反応して水素を生成することが予想されたので、ナノシート表面にRh-D結合を表面に形成して水と反応させたところ質量数3の水素が検出された。Rh-Hの水素のような状態が助触媒サイトで観察されたのは本研究が初めてであり、本研究成果により助触媒表面における水素の生成機構が完全に解明されると期待してい
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験と計算の融合により光触媒反応の助触媒上での水素生成機構の解明が大きく進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
ナノシートを用いた光触媒の開発を引き続き継続するとともに、水分解光触媒反応機構の完全解明を目指して研究を実施する予定である。具体的には可視光照射下で水の完全分解が可能なN-doped Sr1.5Ba0.5Ta3O10を合成し、この可視光応答性のナノシートを利用してpn接合を形成することにより、その活性の向上を目指す。また、pn接合シートの粉末化にも挑戦する。その他、Rh-doped酸化物ナノシートを用いて計算と実験の両方から光触媒反応に基づく水素生成反応の機構を明らかにする予定である。
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