光ビームの位相分布が光軸を中心に方位角方向に滑らかに変化している光渦を用いて、物質にその位相情報を転写し、最終的にはこれを電子ビームに転換する方法の確立を目指した研究を進めている。これを実現するために、本研究者らが有する高品質光渦ビームの作製方法を短波長領域に拡張することを目指し、He-Cdレーザーの共振器設計と光渦の発生実験を進めた。共振器ミラーの中心にドリル加工およびレーザー加工で大きさを変えて点欠陥を作製した。その際、既存のレーザー共振器の幾何学的条件から、ミラー上での光ビームの大きさを計算によって求め、基本モードが十分に抑圧されるであろう点欠陥の大きさを推定し、実際の作製する欠陥の大きさの目安とした。次に、これらのミラーを用いて、光渦ビームの発生実験を行い、さらにその特性を解析し、最適な条件を求めた。この際、発振を実現するためには、ミラーの角度調整だけでなく、レーザーの光軸と点欠陥の中心位置の正確な調整が必要であるため、既存のレーザー共振器に、特別の調整冶具を設計・試作して取り付けた。中心位置の調整は角度調整ほど容易ではないものの、光渦は安定に発生することを確認した。この結果、主な発振線である325nmおよび442nmの両方で光渦を観測し、ほぼ100%に近い純度であることを確認した。さらに、平面波との干渉実験を行い、光渦の干渉縞として特徴的なフォーク状のパターンの観測に成功した。これは、物質に対する光渦の位相情報の転写に十分な品質である。
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