研究課題/領域番号 |
15H01999
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
京谷 隆 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90153238)
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研究分担者 |
西原 洋知 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80400430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゼオライト鋳型炭素 / リチウムイオン二次電池 / 正極材料 / リチウムイオンキャパシタ / 電気化学キャパシタ / カーボンエッジサイト |
研究実績の概要 |
本研究では「ゼオライト鋳型炭素」のユニークな構造を利用することで、高性能なリチウムイオン二次電池の正極材料の開発を行う。本研究ではまた、リチウムイオン二次電池と同様に蓄電デバイスであるリチウムイオンキャパシタや電気化学キャパシタの電極材料の開発研究も行う。リチウムイオン二次電池の場合と異なり、これらのデバイスでは電極材料の炭素と電解液との反応性の抑制が鍵となる。ゼオライト鋳型炭素は極端にエッジの量が大きい炭素であるため、電解液と炭素との電極反応を調べるのに最適であり、劣化メカニズムを明らかにすることで、高性能炭素材料の開発に繋げる。前々年度まではゼオライト鋳型炭素のエッジサイトへの電気化学的な含酸素官能基導入および、疑似容量の発現について検討し、有機電解質中でも含酸素官能基がゼオライト鋳型炭素に導入されることを明らかにした。さらに、通常のリチウムイオン二次電池の電解液中(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートに溶解したLiPF6中でもゼオライト鋳型炭素は疑似容量を発現することを見出した。昨年度は「ゼオライト鋳型炭素」と同様の鋳型法を用いて、「ゼオライト鋳型炭素」に比べて極めてエッジサイトが少ない3次元グラフェン状炭素を合成した。この炭素はエッジサイトが極めて少ないので、正極の活物質として用いても劣化しないと考えた。実際、電気化学キャパシタの電極として3次元グラフェン状炭素を用いたところ、4 Vという高電圧を印加してもこの炭素は電気化学的劣化がないことがわかった。つまり、エッジサイトを少なくすれば正極として利用できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では「ゼオライト鋳型炭素」のエッジサイトにあるキノン基を酸化還元サイトとして利用することで、高性能で降雨容量なリチウムイオン二次電池の正極材料の開発を行うことが当初の目的であった。研究を進めていくと「ゼオライト鋳型炭素」のエッジサイトにあるキノン基やフランタイプのエーテル基はアニオンラジカルあるいはカチオンラジカルになることでリチウムイオン二次電池の電解質となるLiイオンと電気化学的酸化還元は行うことは実証したが、それら酸化還元が寄与する容量が少ないことと、「ゼオライト鋳型炭素」を正極として利用すると電気的にすぐに劣化することなどが明らかとなった。そこで、「ゼオライト鋳型炭素」と同様の鋳型法を用いて、「ゼオライト鋳型炭素」に比べて極めてエッジサイトが少ない3次元グラフェン状炭素の合成を試み、極めて電気化学的に安定な炭素の合成に成功した。これらの結果を論文として投稿したところ、すぐにアクセプトされ、印刷するに至っている。つまり、当初の目論見はやや外れたが、本研究を通じてそれより高性能な炭素を合成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は「ゼオライト鋳型炭素」と同様の鋳型法を用いて、「ゼオライト鋳型炭素」に比べて極めてエッジサイトが少ない3次元グラフェン状炭素の合成を試み、極めて電気化学的に安定な炭素の合成に成功した。今後はリチウムイオンキャパシタの新規電極材料開発に向けた検討を実施する。この3次元グラフェン状炭素を正極活物質として利用することで、どれだけ高電位に持って行くことができるか、さらにどれだけリチウムイオンキャパシタのエネルギー密度を上げることができるかに焦点をおく。さらに、今までの研究で得られたカーボンエッジサイトの化学的形態と電気化学的安定性との関係に関する知見を利用して、「ゼオライト鋳型炭素」の電気化学的安定性の向上と当初の目的であったキノン基を利用した正極容量の向上を目指す。
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