研究課題
平成29年度の研究により、TRAP提示法を用いた人工抗体選択系が完成し、また、コムギ胚芽を用いることで標的タンパク質の調製に成功した。そこで平成30年度は、コントロールタンパク質群と少数タンパク質群をコムギ胚芽で調製し、TRAP提示法による人工抗体選択系を用いて抗体の作製を試みた。これにより少数タンパク質群に対して人工抗体を得ることに成功した。大腸菌で人工抗体を発現してその解離定数を測定したところ、数~数十nMの解離定数をもつ人工抗体が得られたことが分かった。一方で、平成29年度はアミノ基を持つシラン化剤で修飾、無水酸処理によるあるカルボン酸の生成、NHS活性化の一連の操作により、タンパク質を効率よく固定化できるガラス基板の作製に成功していた。さらにガラス表面の凹凸を少なくするために、モノメトキシシランを使用して、ガラス表面の均質な修飾を試みた。様々な条件検討の結果、AFMでの観察で凹凸が数nm以下の修飾ガラス基板の作製に成功した。そこで、人工抗体をTAMRA蛍光基で修飾してガラス基板に直接固定化して蛍光を測定した。この実験の結果、TAMRA蛍光基は蛍光強度が十分でないことが分かった。そこで、蛍光強度が2~3倍強いとされるJF549を合成し、さらにこれをGGGGGKペプチドに修飾して、SortaseAを用いて人工抗体に結合させた。その結果、見かけの蛍光強度が1.5~2倍の人工抗体が得られた。次に、モデルタンパク質であるEGFR1を固定化したガラス基板に、抗EGFR1人工抗体を含む溶液をのせてEGFR1の1分子検出を試みた。このときガラス基板の表面のPEG修飾により人工抗体の特異的な吸着が大きく抑えられることが分かった。ただし、この非特異的吸着は完全に抑えられるものではなく、より精密な1分子定量には、非特異的な吸着をさらに抑える工夫が必要であることも示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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ChemBioChem
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Biochemical and biophysical research communications
巻: 504 ページ: 709-714
10.1016/j.bbrc.2018.08.178.