研究課題/領域番号 |
15H02011
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
宮崎 英樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, グループリーダー (10262114)
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研究分担者 |
川津 琢也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (00444076)
間野 高明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (60391215)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / メタマテリアル / メタ表面 / 量子井戸 / 中赤外光 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、極薄エピ層移植技術を確立してIII-V族半導体多重量子井戸(MQW)をAu基板・Auストライプから成るメタ表面に挟み込み、高感度・低雑音で高温動作可能な中赤外検出器を実現することである。有害なHg、Cdに依存したMCT検出器に代わる低毒性中赤外検出器として、量子井戸のサブバンド間遷移を利用する量子井戸赤外検出器(QWIP)が有望とされてきた。しかし、遷移の選択則という強い原理的制約により、十分な感度は実現されていない。本研究では、メタ表面の電場回転・電場増強機能により、入射光を完全に吸収して電流に変換し、10μm帯にて、従来のMCT検出器に匹敵する量子効率50%、検出能5×10^10cmHz^1/2/Wをわずか数層の量子井戸で実現することを目指している。 平成27年度の第一の課題は、GaAs基板上にエピタキシャル成長したMQW層をAu基板に載せ替える極薄エピ層移植技術の確立であった。これを超高真空表面活性化法の適用により達成した。現時点で、エピ層成長時に発生する突起や工程中に混入する微粒子の挟み込みによる欠陥、割れなどの問題は残っているものの、150℃以下の低温で基板を接合し、第1基板を機械的・化学的研磨により除去する一連の工程を確立した。また、接合後のMQW層の電気的・光学的特性も損なわれないことを確認した。 第二の課題はプラズモン共鳴と両立するOhmic接合の確立であった。当初は極薄AuGe/Ni層を挿入し、最低限の熱処理にて合金化する方法を考えていたが、GaAsへのn型ドーパントの最適分布制御によりOhmic化する新規手法を開発し、これを解決した。 第三の課題は、MQWの設計に必要なSchrodinger方程式とPoisson方程式の連立による計算方法の確立であった。市販ソフトウェアおよび自作プログラムの組合せによりこれを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
同一機関に所属する研究分担者との有機的な強力体制が極めて有効に機能し、当初計画を越える進展があった。極薄エピ層移植技術は、機関内にて開発されていた超高真空表面活性化法により実現した。2枚の基板の角度合わせなど、新しい要求を満たす必要があったが、密接な連携により専用ホルダを新規開発し、これを解決した。ドーパント制御による極薄Ohmic接合の確立は研究分担者の長年の経験に基づいた発想に基づくものである。これにより、メタ表面にとって最重要な金属-半導体界面の表面プラズモンの伝搬を維持したまま電流を取り出すことが可能になった。また、MQWの設計手法の確立は、購入した市販ソフトウェアだけでは達成できないことが最終的にわかったが、研究分担者との深い議論に基づき、理論に関する文献を参考に、光学的・電気的特性の計算プログラムを独自開発し、当初予定した以上の様々な特性を設計段階で議論できる体制が構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実際の赤外検出器への統合・実装・特性評価・その改良が課題になる。引き続き研究分担者や関連研究者との密接な連携に基づき、独自性の高い検出器の実現、有害なHg、Cdに依存した従来検出器との性能比較を推進していく。
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