研究課題
本研究の目標は、極薄エピ層移植技術を確立してIII-V族半導体多重量子井戸(MQW)をAu基板・Auストライプから成るメタ表面に挟み込み、高感度・低雑音で高温動作可能な中赤外検出器を実現することである。有害なHg、Cdに依存したMCT検出器に代わる低毒性中赤外検出器として、量子井戸のサブバンド間遷移を利用する量子井戸赤外検出器(QWIP)が有望とされてきた。しかし、遷移の選択則という強い原理的制約により、十分な感度は実現されていない。本研究では、メタ表面の電場回転・電場増強機能により、入射光を完全に吸収して電流に変換し、10μm帯にて、従来のMCT検出器に匹敵する量子効率50%、検出能5×10^10cmHz^1/2/Wをわずか数層の量子井戸で実現することを目指してきた。平成30年度の第一の課題は、本来、単一波長、単一偏光にしか感度を持たないメタ表面赤外検出器を、メタ表面構造の改良により、高性能化することであった。感度は直感に反して量子井戸層数が少ない方が良いことがわかり、わずか1層にまで削減することにより、標準的なストライプ構造で波長7.0μm、感度2.2A/W、量子効率39%、検出能4.0×10^10cmHz1/2/W、偏光依存性を解消した新構造で6.7μm、3.3A/W、61%、5.2×10^10cmHz1/2/Wという世界最高レベルの性能を実現し、また、すべての点で本研究の目標を達成した。第二の課題は、赤外検出器の多画素化であった。読み出し集積回路と自作量子井戸構造との初めての接合を行った。その後の加工や動作確認は期間内に終了できなかったが、引き続き試作を進めて行く。4年間の研究の成果のとりまとめとして、平成29年度に主に確立していた新型コンタクト層について国際会議と論文発表を行った。検出器についても学会発表と論文投稿を行った。特許出願も準備中である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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