研究課題
本研究の目的は、スピントロニクスによるスピン流生成・検出技術とフォノニクス技術とを融合することで、熱スピン変換の高効率化原理や新奇なスピン流・熱流・音波制御技術を構築することである。今年度は、以下の3課題について研究を進めた。1.ナノ構造化によるスピン伝導断熱材料の創製: スピン流物性の研究に主に用いられているYIGを用いてナノ構造化バルク材料を合成し、ナノ結晶粒径に依存した明瞭な熱伝導率の低減効果を観測した。ナノ構造化YIGにPt薄膜を接合した系においてスピンゼーベック効果が発現することも確認した。2.フォノニクスの応用によるスピン流ダイオード機能の実証: レーザー加工法を用いて磁性絶縁体薄膜上にフォノニック微細構造を作製し、スピン波伝搬特性を評価した。現状では明瞭な整流特性は得られていないが、最適な微細構造を決定するための検討・実験を継続する。3.新奇な熱スピン・熱電効果の開拓と応用: 動的赤外線発熱解析技術に基づく熱スピン・熱電効果計測システムを立ち上げた。このシステムを用いて、スピン流注入による温度変調効果(スピンペルチェ効果)の可視化技術を確立し、スピン流に伴う温度変化の強度や空間分布を明らかにした。さらに、強磁性体において発現する非自明な熱電効果の観測にも成功するなど、研究開始当初は想定していなかった発見も相次いでいる。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究で立ち上げた動的赤外線発熱解析技術に基づく熱スピン・熱電効果計測システムにより、スピン流注入による温度変調効果の熱画像計測の実現や、強磁性体における新奇熱電効果の観測など、研究開始当初は想定していなかった成果が相次いで得られているため。
1.ナノ構造化によるスピン伝導断熱材料の創製: ナノ構造化YIG/Pt薄膜接合におけるスピンゼーベック効果の系統的な温度・磁場依存性測定を進めることで、マグノン・フォノンに対するナノ構造界面の影響を明らかにし、これらの伝導特性の独立制御の実現を目指す。2.フォノニクスの応用によるスピン流ダイオード機能の実証: 本課題は当初の計画通りに進展していないが、すでに別アプローチの検討も進めており、リスクヘッジを行いながら研究を進める。3.新奇な熱スピン・熱電効果の開拓と応用: 動的赤外線発熱解析技術を用いた実験を加速させ、スピン流-熱流-電流相関効果及びマグノン-フォノン相関効果の体系化や、その応用機能の開拓を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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