研究課題/領域番号 |
15H02015
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石橋 幸治 国立研究開発法人理化学研究所, 石橋極微デバイス工学研究室, 主任研究員 (30211048)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子ドット / 共振器 |
研究実績の概要 |
本研究では人工原子として量子情報を保持する量子ドットとマイクロ波光子を保持する共振器との相互作用を調べ、量子力学的なコヒーレントな相互作用を実現することを目的としている。量子ドットとしてはInSbやGe/Siコアシェルナノワイヤを微細なゲートに電圧を印可することにより形成する。量子ドットを超伝導マイクロ波回路共振器中に設置するためのデバイスプロセス技術の開発および共振特性を得るためのマイクロ波の透過測定のシステムも完成し、InSbナノワイア2重結合量子ドットを用いて、実際に極低温での共振特性の測定に成功し、2重ドットの電荷状態の応じた共振特性(共振周波数、ピーク幅、位相)をえることができた。電荷状態を2重ドット間に広がった状態から、一方のドットに局在した状態に変えて共振特性を測定することができた。また、ドットと電極との結合(デコヒーレンスの影響)の効果を見ることもできた。Ge/Si量子ドットでは電荷状態が非常に不安定であったが、BN薄膜を絶縁体として用いるプロセスを開発し格段に安定度が増した。しかし、現時点では、InSbとGe/Siいずれのデバイスにおいても、ドット間の結合を制御性よく変えることができておらず、また、コヒーレントな結合の観測には成功していない。共振特性の解析から、ドットのデコヒーレンスがドット/共振器の結合のエネルギーよりも大きいことが原因であることが分かった。この系についても初めて共振特性を測定することができた。また、共振測定の測定システムを改良し、共振器中の平均光子数が1以下でも測定が可能とすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、デバイスプロセス技術およびマイクロ波測定技術においてかなり高度な開発や準備を行う必要がある。現時点では、困難であった電荷ノイズの軽減と平均光子数1以下を実現するための弱いマイクロ波入力での測定システムを構築することができ、実際に量子ドットの共振特性を測定することに成功した。困難が予想された基本的な技術開発をクリアできたので、最終年度に向けて成果を期待することができる。
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今後の研究の推進方策 |
量子ドットと共振器中の光子との量子力学的コヒーレントな相互作用を得るにあたっての問題点が、今年度の初めての測定によって明らかにすることができた。目的を達成するための量子ドットのプロセス技術の改善、測定時における量子ドットの電荷状態のチューニング等の課題が明らかになったので、それらを行うことにより目的を達成する。
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