研究課題/領域番号 |
15H02019
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岩谷 素顕 名城大学, 理工学部, 准教授 (40367735)
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研究分担者 |
上山 智 名城大学, 理工学部, 教授 (10340291)
松本 貴裕 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (10422742)
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / レーザ / 紫外 / 電子線励起 / 電子線 / キャリア注入 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、未踏領域波長である深紫外領域の電子線励起の半導体レーザを実現することを目標に研究を進めてきた。半導体レーザを実現するためには、材料自体が光学的な利得を有していること、光共振器を形成することが可能であること、さらにキャリア(電子・正孔)を活性層中に注入することが必要である。紫外発光材料として、窒化物半導体(GaN、AlN、InNおよびそれらの混晶)は高いポテンシャルを有しており、既に高効率な紫外LEDが実現され、現在社会実装が進められつつある。その一方で、同材料は直接遷移型半導体であるため、半導体レーザとしての高いポテンシャルがあるとされ、世界的に研究化が進められている。これまでに、光励起の手法により、同材料は光学的な利得を有していること、また光共振器を形成することが可能であることが確認されてきた。その一方で、キャリアの注入に関しては、高い正孔濃度を持つp型AlGaN結晶を得ることが非常に困難であるため、一般的な半導体レーザで用いられているpn接合による方法が用いられていない。本研究課題では、それらの問題を打破するために、電子線励起という新しい方法を適用することを検討してきた。 平成27年から電子線励起の装置を導入し、紫色領域でのレーザ発振を確認し、平成28年度は紫外領域の電子線励起を検討してきた。また、加速電圧によって、注入されるキャリアの効率が変化することが確認されたため、電子線シミュレータを導入し、電子線の軌跡を解析することによって効率よく発光層を励起できる方法を検討してきた。結果として、350nm帯の紫外線レーザを実現することが確認できた。さらに光励起の方法を活用することによって、200nm帯の低閾値化にも成功した。最終年度となる平成29年度は、これらの成果を活用し、200nm帯の電子線励起レーザおよびその学理を探求する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、電子線励起による紫外線レーザを実現することを目的としてきた。初年度は、レーザ発振に必要な電子線源の設計から装置導入を進め、電流注入実績のあるGaInN活性層を用いたレーザの実証まで確認をした。その結果を用いて、平成28年度は電子線励起による紫外線レーザを検討し、結果としてGaN/AlGaN活性層を用いた紫外線レーザを実現するに至っており、当初予定していた研究内容を順調に進めてきたと考えている。また、学理に関しても検討を進めており、加速電圧や電子線パルス幅、スポットサイズの依存性を検討した結果から、これまでに加速電圧の違いによって活性層の励起効率が変化することを確認した。それらを学術的に理解且つ制御することをめざし、電子線シミュレータを導入し、解析を行った結果、電子線の軌跡を理解することによって最適な加速電圧、さらに電子線励起レーザを実現するのに最適な構造に関しての知見を深めた。さらに最終年度に向けて光励起法を用いて200nm帯のレーザ構造の最適化を進めており、サファイア基板上に作製したAlNテンプレート、およびAlN基板上に作製したAlNテンプレートなどを用いて低閾値レーザの実現を進めており、最終年度で実現を目指す200nm帯の電子線励起・深紫外レーザを実現するうえで非常に良い知見を得たと考えている。 これらの結果は、学術論文や国内・国際学会で発表しており、国際学会の招待講演にも3回選出されており、高い学術的な評価を得ていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にも記載したように、これまでの検討でGaN/AlGaN活性層を用いた電子線励起による紫外線レーザは実現を実証した。また、光励起法による200nm帯のレーザの構造最適化はほぼ完了している。さらに、シミュレータおよび実験を組み合わせることによって電子線励起による最適なデバイス構造に関する知見を得てきた。これらの成果を活用することによって、未踏である200nm帯の電子線励起のレーザの実現を検討するのが本年の課題である。また、これまでの検討でAlGaNの結晶性とレーザ特性には相関があることがわかっており、高品質結晶化が可能である、バルクAlN基板やスパッタAlN薄膜をアニールする手法を適用し、レーザ性能の向上を検討する予定である。 さらに完成年度である平成29年度は学理の追及に関しても進める予定であり、博士研究員として雇用しているHanはデバイス物理の専門家であることから、彼がこれまで培ってきたLEDをはじめとしたデバイス物理の学理を活用して、電子線励起のレーザの学理を追及し、学術的な成果を追求していく予定である。さらに、現状エッジエミッティングレーザが研究の中心となっているが、デバイス応用を考えると面発光型のレーザも検討が必要であることから、可能であれば面発光型の電子線励起レーザも検討を進める予定である。 これらの結果を学術論文としてまとめ、最終的な成果をまとめるのが本年の研究内容となる。
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