(計画1)BTFO-NFO系で,当研究室独自のフラックスエピタキシー法により,BiOxの過剰環境下で,ナノコンポジット構造におけるBTFO相の超周期構造の温度依存性を抑制し,かつNFOピラーサイズをこれまでのサイズの数十倍以上にすることができた。また,この結果より,BiOxがスピネルフェライトのフラックスエピタキシーに有効なフラックスであることが示唆され,実際にサファイアc面にBiOxフラックスによりNFO単膜の作製を試みた結果,著しい結晶ドメインの成長が確認された。一方,前年度の同時蒸着PLDの装置トラブルの改善以降,強誘電体薄膜の傾斜組成膜の作製に着手した。Srを置換したBaTiO3((BaSr)TiO3)のSr濃度を薄膜成長中にナノレベルで変化させることで,新規強誘電性物性の発現を狙った。Sr濃度が徐々に増大,あるいは減少する”up-graded"と”down-graded"膜との間で,PFMにより分極反転に必要な電界に系統的な違いが確認され,従来から傾斜組成強誘電体薄膜で指摘されている内部電界の効果であるものと推測された。さらに,Sr添加NaTaO3の傾斜組成膜の作製では,Sr添加NaTaO3の単組成膜では,SrがAサイトのみ置換しているが,傾斜組成膜としてSrを添加すると,SrがBサイトにも置換されることが示唆された。この材料は,光触媒材料としても知られ,強誘電体評価と併せて,今後は光電気化学特性評価も試みる予定である。
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