研究課題/領域番号 |
15H02027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳥井 寿夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40306535)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レーザー冷却 / ホローカソードランプ / 準安定状態 / 分光 / 超微細構造 / 同位体シフト |
研究実績の概要 |
ホローカソードランプを用いた準安定ストロンチウム原子の分光を、様々なバッファガスのもとで行った。具体的には、従来の(A)Xe0.5Torr+Ne0.5Torrの組み合わせに加えて、Xeの割合の高い(B)Xe1Torr+Ne0.3Torr(Xeのみでは放電開始電圧が500V以下にならなかった)およびNeの割合の高い(C)Xe0.2Torr+Ne1.8Torr(全圧2Torr以下では放電開始電圧が500V以下にならなかった)の組み合わせで実験を行った。先行研究から、(C)の場合、イオン化されたXeの易動度が大きくなり、Sr原子のスパッタリング効率が上がると期待された。実際、放電開始から10秒程度は、(A)の2倍程度の準安定状態Sr原子の密度が得られたが、定常状態においては(A)で得られる密度を大きく下回った(1/5程度)。一方、(B)の場合、放電開始直後においても、定常状態においても、準安定状態Sr原子の密度は(A)の1/5以下であった。これらの結果から、XeとNeを同じ分圧で封入した(A)の組み合わせが最適であることが判明した。 (A)の組み合わせのホローカソードランプを用いて、5s5p:3P2-5s5d:3D2遷移および5s5p:3P2-5s5d:3D3遷移の同位体シフト(86Sr-88Sr)および超微細構造(87Sr)の観測に世界で初めて成功した。特に5s5p:3P2-5s5d:3D3遷移においては、レーザー冷却されたSr原子を用いた先行研究(PRA90.0225121(2014))においても磁気双極子結合定数は確定できなかったが、我々の実験結果によって、その値が-150MHz程度であることが確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ホローカソードランプを用いた87Sr原子の5s5p:3P2-5s5d:3D2遷移および5s5p:3P2-5s5d:3D3遷移の超微細構造の観測は世界初であり、未だ報告のない磁気双極子結合定数を精密に決定するために、再現性のある実験データを何度も取り直す必要があった。そのため、当初予定していた689nm遷移を用いたレーザー線幅狭窄化の実験を進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
遅れていた689nm遷移を用いたレーザー線幅狭窄化の実験を進める。また準安定状態Sr原子の分光に最適なホローカソードランプのバッファガス条件を確定したので、この条件のホローカソードランプを用いたレーザー周波安定化システムを構築する。ストロンチウム原子のレーザー冷却のための真空系(原子オーブンおよびゼーマン減速器)を構築し、1S0-1P1(461nm)遷移のレーザー冷却および3P2-3D3(496nm)遷移のレーザー冷却を試みる。461nmおよび496nm光源には、テーパーレーザー(922nmおよび992nm)の出力を導波路型PPLNで波長変換(SHG)したものを用いる。
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