線幅がmHz級のレーザーを光格子中に閉じ込められたストロンチウム原子を用いて実現するための基礎研究を行った。その一つとして、ホローカソードランプを用いた準安定状態の5s5p 3P2-5p^2 3P2遷移(波長481nm)の分光を行った。この遷移は、これまでストロンチウム原子のレーザー冷却のリポンプ遷移として用いられてきた、5s5p 3P2-5s5d 3D2遷移(波長497nm)に比べて2倍以上の遷移モーメントを持つ。近年我々が開発した横磁場を用いる複屈折性原子気体レーザー周波数安定化法(BAVLL: birefringet atomic vapor laser lock)で十分な安定度ででレーザーを安定化できることを実験的に検証した。これは、今後のストロンチウム原子のレーザー冷却のリポンプ遷移のスタンダードとなることが期待される。また、ストロンチウム原子のレーザー冷却を、ゼーマン減速器を用いず、熱的原子ビームから直接ガラスセル内の磁気光学トラップ(MOT)にロードする手法の特性評価を行った。オーブン温度400℃におけるガラスセル内の真空度は10^(-8) torrで、MOTの寿命は200 ms、原子数は10^6個であった。これは、光格子時計を実現するに十分な値である。今後は、光誘起脱離(LIAD)やパルスレーザーによるスパッタリングなどを用いて、オーブンを駆動せずに原子をMOTにロードする手法を目指す。
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