研究課題
1.単結晶試料の球形化:t2軌道系ペロフスカイトYTiO3, YVO3及び同系スピネルMnV2O4,e軌道系ペロフスカイトKCuF3,高温超伝導体母物質Pr2CuO4について,共同研究者から提供された良質単結晶の球形加工を行った.X線・放射光実験に適した直径50μ-100μの球形に加工し,以下の2で導入されたX線発生装置と回折計で結晶構造解析実験を行った.放射光実験に耐え得る良質の球形単結晶を得る事に成功した.2.高輝度微小焦点単結晶X線構造解析装置の開発:実験室系での実験のために,本予算で微小焦点X線発生装置を導入し,構造解析のための現有の4軸回折装置を組み込んだ.予算の関係で集光装置がつけられなかったため,当初予定の輝度には達していないが,1で加工した球形試料について,信頼度因子で2-3%程度の,非常に高精度で構造解析を行う事に成功した.3.放射光結晶構造解析による価電子密度分布観測:t2軌道系スピネルMnV2O4,e軌道系ペロフスカイトKCuF3について,KEK-PFの構造解析専用ビームラインBL-14Aにおいて,多重散乱を回避したブラッグ反射強度測定を行い,結晶構造解析を行った.信頼度因子で1%に迫る,極めて高精度・高確度の構造解析に成功した.これは現在普及しているイメージングプレートやCCD二次元検出器を用いた実験では到底達成できない,我々の手法にのみ可能な実験精度である.この結果から異方的な電荷密度分布の成分を抽出した結果,これらの系が示す軌道秩序に対応した異方的な電荷密度分布,即ち価電子密度分布の可視化に成功した.4.電荷密度分布の異方性を取り入れた結晶構造解析法の開発:t2軌道系ペロフスカイトYTiO3について,異方的な価電子密度分布の可視化に成功した.この密度分布の定量評価の為に,異方的な密度分布を構造解析に予め組み込んで解析する事に成功した.
2: おおむね順調に進展している
予定どおり微小焦点X線発生装置の導入が行えた.集光デバイスが予算を削られた関係で導入できなかったので,輝度が当初の予定には届かなかったが,実験室レベルでは最高精度の構造解析をおこなう事に成功した.
27年度は中性子回折実験が行えなかったため,28年度は海外の中性子施設で構造解析実験実験を行い,原子核密度分布の可視化に取り組む.これにより,異方的に広がった電荷密度分布と,熱振動による密度分布の「ぼやけ」を完全に分離して,より精密な価電子密度分布の抽出を目指す.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件)
Phys. Rev. B
巻: 93 ページ: 064415
10.1103/PhysRevB.93.064415