研究課題/領域番号 |
15H02042
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 正明 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (10253395)
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研究分担者 |
井上 倫太郎 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (80563840)
藤井 紀子 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90199290)
加藤 晃一 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20211849)
矢木 宏和 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (70565423)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SAXS / SANS / j重水素化 / コントラストマッチング / クリスタリン |
研究実績の概要 |
タンパク質は生命現象を司る基本因子であり、その機能を理解するために静的・動的構造の研究が精力的に行われている。しかしながら、分子科学的な研究は結晶または希薄溶液中で行われており、実際にタンパク質が機能発現する細胞中=多元高濃度系とは異なっている。そこで本研究は生体中に近い環境下でのタンパク質の構造を捉える手法を開発することを目的としている。つまり、「多種類」かつ「高濃度」の「タンパク質水溶液中」での「1つのタンパク質の構造」を測定手法の開発である。まず「水溶液中」での構造測定手法として本研究では「小角散乱法」を用いる。小角散乱法のプローブとしてはX線と中性子線があるが、本研究では両者の特徴を利用して相補的に使用する。X線小角散乱(SAXS)法は、高強度のシンクロトロン光を線源とすることで少量試料での短時間測定を可能とし、計算機を用いた解析手法の進歩とも相まって希薄溶液中でのタンパク質の外形を捉える手法として確立している。加えて近年は高精度光学系や高感度検出器の出現により実験室設置のSAXS装置でもタンパク質の溶液散乱が十分に可能となってきた。そこで、今年度は最新の光学系と2次元半導体検出器を備えたSAXS装置の導入を行った。今後この装置を用いて高濃度系の測定を行う前にタンパク質の溶液中での基本構造の測定に用いる予定である。タンパク質多元高濃度系での観測のキーポイントは「注目しているタンパク質のみを可視化し、それ以外のタンパク質を不可視にする手法開発」である。本研究では特に水素において大きい中性子散乱における同位体効果を利用し、タンパク質の精密部分重水素化と溶媒コントラスト変調中性子小角散乱(CV-SANS)を組み合わせて上記手法の確立を目指している。本年度は、水晶体内タンパク質クリスタリンの部分重水素化とそれを用いたCV-SANS測定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における重要なポイントは重水素化率を制御したタンパク質の調製手法の確立である。平成27年度は、重水素化タンパク質調製系の立ち上げおよびそれを用いて75%重水素化タンパク質の調製を行った(註:これまでは100%重水素化タンパク質のみの調製を行っていた)。更に調製した75%重水素化αBクリスタリンを用いたSANS測定をオーストラリアの中性子散乱研究施設(ANSTO)に設置されたSANS分光器(QUAKKA)およびフランスのラウエランジュバンお研究所のSANS分光器(D22)を用いて反転コントラストマッチング中性子小角散乱(iCM-SANS)測定を行った。その結果、75%重水素化αBクリスタリンと軽水素化(通常)αBクリスタリンの2元系では、前者からの散乱を消して後者からの散乱のみを観測することに成功し、この2元系におけるKineticsの解析を行った。 また、調製したタンパク質の基本構造測定のための集光光学系、低寄生散乱スリット、高感度大面積2次元半導体検出器を備えたX線小角散乱(SAXS)装置の導入を進めた。この実験室設置の装置を用いて調整したタンパク質の構造および凝集の有無等の評価が可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
試料調製:現在の調製試料の重水素化率は100%及び75%であるが、任意の値での重水素化が可能となるように調製技術の検討を進める。また、より精密な重水素化率の制御手法の確立を目指す。加えて、調製後の試料の重水化率を正確に求める手法の確立も進める。一般的な重水素化率の測定法はNMR法とMaldi-TOF MS法であるが(赤外線分光法は精度の点から不適)、大型のタンパク質を扱っている本研究に最適な手法を検討する。 測定法:調製後の試料は、動的光散乱・SAXS測定で構造および凝集濃霧の確認を行う予定であるが、高濃度系での確認手法の検討行う。また、iCM-SANS測定を種々の条件(濃度・多元系)で行い、問題点の抽出と検討を行う。現在の考えられる問題点は、タンパク質不可視のための「正確にマッチングポイントを求める手法」及び「タンパク質内の残存軽水素から中性子非干渉性散乱の評価法」の確立である。実際にαクリスタリンを用いたSANS測定により上記問題点の検討・解決を進める。
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