研究課題/領域番号 |
15H02046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 文俊 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00235392)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質 / 量子化学計算 / 密度汎関数法 / 分子動力学法 |
研究実績の概要 |
本研究は、タンパク質などの大規模分子の量子化学計算・量子分子動力学に資する第3世代密度汎関数法アルゴリズムを世界に先駆けて展開し、基盤技術を構築することを目指している。第3世代密度汎関数法アルゴリズムは、標準カノニカル分子軌道法で、どのような大規模並列計算機アーキテクチャでも性能を活かすことができ、厳密に計算精度を制御可能である。また、これまで数値積分法で求められていた交換相関積分計算も含めて、すべて解析的に計算可能であり、数値不安定性などが生じない特長を持つ。この第3世代密度汎関数法アルゴリズムを基に、近似なしの大規模カノニカル分子軌道計算1点のみならず、本格的な動的分子構造計算法として展開し、正攻法による自由エネルギー計算法の確立することを目的とした。 本年度は、タンパク質カノニカル分子軌道計算が可能なProteinDFをベースとしたBorn-Oppenheimer分子動力学計算(BO-MD)プログラムを開発し、インフルエンザウィルスM2タンパク質のプロトン移動および水素イオンチャネル作用機構を、信頼性の高いBorn-Oppenheimer分子動力学法を用いて解析することを試みた。分子動力学計算パッケージとしてソースが入手可能で改変可能なGromacsを採用し、大規模分子軌道計算ソフトProteinDFと連携するための機能追加・変更を行った。低分子など具体的な分子を用いて、本ProteinDF-Gromacs連携システムが正常に動作することを確認した。また、タンパク質カノニカル分子軌道は高価であり、特にエネルギー勾配計算に対して第3世代密度汎関数法アルゴリズムが適用外であった。ProteinDFにおいてMPIおよびOpenMPによるエネルギー勾配計算の並列化を施し、より早く計算できるように改良した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Gromacsを用い、大規模BO-MD法の基盤となるプログラムを開発した。GromacsはC++で開発されている大規模分子動力学法プログラムであり、様々な解析ツールを利用することができる。また、Gromacsは自由にソースコードを入手し、変更することができる。そのため、我々が開発しているカノニカル分子軌道計算プログラムProteinDFと連携する分子動力学プログラムとしてGromacsを採用した。しかし、GromacsはProteinDFをはじめとする量子化学計算パッケージとBO-MD計算法のための連携・実装が行われていない。本研究では、ProteinDFと連携するためにGromacsのプログラムを修正した。計算構造の原子座標とエネルギー勾配(原子のはたらく力)の受け渡し部分だけでなく、点電荷の受け渡し部分も実装した。点電荷は、様々な溶媒環境でカノニカル分子軌道計算のため必要であり、例えば、電気的に中性にするときには対電荷として付加したり、水分子の力場として取り込んだりする。 また、ProteinDFのエネルギー勾配法を実装し、またMPIおよびOpenMPによるハイブリッド並列化を行った。ProteinDFとGromacsの連携によって、カノニカル分子軌道計算に基づくBO-MD法の基盤が整った。インフルエンザウィルスM2タンパク質のモデリングを行い、QCLO法に基づきカノニカル分子軌道計算を試行した。依然としてタンパク質カノニカル分子軌道計算の計算コストが高く、時間不足であることが懸念されたため、オキシトシンなどの小規模なタンパク質でBO-MD計算のテストを行い、ProteinDF-Gromacs連携システムが動作することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画(第3世代法の超並列計算基盤技術の研究開発、全解析エネルギー勾配計算法ならびに大規模BO-MD法の開発、カノニカル分子軌道計算を基にした新原子電荷の研究)を継続しつつ、以下の点に注力する。 1. インフルエンザウィルスM2タンパク質のBO-MD法によるプロトン移動実証計算 M2タンパク質の水素イオンチャネル作用機構を、本研究で開発したBO-MD法を用いて実施・解析する。タンパク 質分子動力学計算におけるカノニカル分子軌道の時間変化を観察する。 2. 新原子電荷を用いたMD法の研究開発とその評価 新原子電荷を用いた分子動力学計算・タンパク質相互作用計算法を開発し、シミュレーションを通して新しい原子電荷を評価する。
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