研究実績の概要 |
2018年度までのMatthew Morrowとの共同研究により,Bhatt-Morrow-Scholzeによる新しい枠組みでの整p進Hodge理論の係数理論として,相対Breuil-Kisin-Fargues加群(相対BKF加群)の理論を構築していた.この相対BKF加群は局所的には基底環Ainfの平坦q接続付きベクトル束で記述される.この局所的記述に関して以下の共同研究を行った.新型コロナウィルス感染症拡大の影響で作業が遅れたが,2018年度までに得られていた結果と合わせて2020年度に論文を完成させた. (i) 平坦q接続付き加群の平坦q-Higgs加群への相対Frobeniusに沿った降下.特にFrobenius構造付きの場合,一意的に降下することを示した. (ii) Frobenius付き相対BKF加群に伴う基底環AcrysのFrobenius付きfiltered crystalの構成.従来の有理係数の整p進Hodge理論との関係を明らかにした.filtrationの構成において(i)の降下が鍵となる.その応用としてLauの半完全環上のDieudonne理論を用いて,Frobeniusの傾きが区間[0,1]に入る相対BKF加群の圏とp可除加群の圏の圏同値を(p>2の場合に)証明した. (iii) prism理論との比較.整p進Hodge理論の係数理論を与えると期待される別のアプローチとしてBhatt-Scholzeによるprismの理論がある.これに関し,基底環Ainfのある種の収束性をみたす平坦q接続付きベクトル束の圏と基底環Ainfのprismatic crystalの圏の間の圏同値を示した.特にFrobenius付きでは,平坦q接続付きベクトル束,平坦q-Higgs束,prismatic crystalの間の圏同値が得られる.
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