研究課題/領域番号 |
15H02063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田村 元秀 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00260018)
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研究分担者 |
小谷 隆行 国立天文台, 太陽系外惑星探査プロジェクト室, 助教 (40554291)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 赤外線 / 地球型惑星 / 視線速度法 / 光周波数コム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、すばる望遠鏡における地球型惑星探査を行うための観測装置を整備し、それを用いた観測とそのための対象選定などの事前観測を行うことにある。今年度は、近赤外ドップラー装置IRDに関して、ハワイ大学における分光器の冷却時の光学試験および光周波数コムと組み合わせた速度決定精度試験を行った。また、小望遠鏡と組み合わせたファーストライト観測を実施し、星のスペクトルの取得と検出器込みの効率を測定した。その結果、分光器および光周波数コム装置の性能が仕様を満たしていることを確認した。具体的には以下のことを行った。
分光器の波長カバレージ、波長分解能が仕様通り(それぞれ、0.97-1.7ミクロン、約70000)であることを測定により確認した。分光器のセラミック光学ベンチ・光学系の温度安定性を向上させ、高速度精度を確保した。検出器として、昨年度導入したHAWAII2-RG二個を実機に導入し、性能評価を進めた。読み出しノイズは10e、暗電流が0.01e/s未満であった。光周波数コムは単体で0.3m/sの速度決定精度を持つ。コムを用いた分光器速度決定精度はほぼ1m/sであった。また小望遠鏡とファイバーをリンクしてIRDによるスペクトルを取得し、望遠鏡ファーストライトを実現し、効率を測定した。これと並行して、サーベイのサンプル星の候補に対してWIYN、岡山などの中小望遠鏡なども用いて事前観測を行なった。これらに基づいて、恒星表面の光度変化等による視線速度ジッターの影響を考慮し、より実現可能な観測計画を検討した。0.1-0.3太陽質量でM4-M7の後期M型星100天体をサーベイし、ハビタブルゾーンにある地球型惑星(スーパーアースから1地球質量惑星まで)の検出と低質量星まわりの軽い惑星の形成理論に制限を与えることの両方が出来る観測プラン立案とシミュレーションを実施した。また、関連する系外惑星および若い星の誕生現場の観測も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分光器も光周波数コムも装置としては完成し、今年度はそれぞれの性能向上も図ることができた。すばる望遠鏡における本格観測開始には至らなかったが、必要な事前観測はほぼ完了し、小望遠鏡による観測を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
すばる望遠鏡においてIRD赤外線視線速度サーベイを行うための試験観測および共同利用観測を遂行し、今後のサーベイのための初期データを取得する。また、太陽近傍の赤外線ドップラー法による地球型惑星という科学的目的のための望遠鏡時間を安定的に確保するための提案を行う。さらに、画像解析一次処理パイプラインのIRDへの実装、視線速度測定用解析ソフトウェアのさらなる改良なども進める。
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