研究課題
本研究では、惑星形成過程を考慮した境界条件のもとで惑星周円盤モデルを作り、衛星系形成の各過程を徹底解析して論理的に組み上げることで、木星系と土星系の軌道分布の違いを合理的に説明し、系外の巨大ガス惑星の衛星にも適用できる一般的な衛星形成の標準モデルを構築することを目的としている。巨大ガス惑星の衛星は、惑星が星周円盤で形成されるのと同様に、惑星周円盤で普遍的に形成されるはずだが、いまだに標準的な形成モデルの枠組みすらできていない。太陽系内では、木星と土星の衛星系の質量・軌道分布は全く異なる。一方で、太陽系外の惑星の観測は急進展しており、巨大ガス惑星周りの衛星も近い将来検出され、分布が統計的に明らかになるであろう。惑星は惑星周円盤を通したガス集積で成長するので、衛星には巨大ガス惑星形成の痕跡を残っているはずであり、衛星系形成の理解は惑星系の多様性の理解にもつながる。平成27年度においては、粘性が弱く、重い惑星周円盤の場合について、簡単なモデルのもとに、微衛星集積、軌道移動の統合的モンテカルロ・シミュレーションを行った。そのような円盤から木星のガリレオ衛星が生まれることは難しいことがわかった。星周円盤から巨大ガス惑星へのガスの流れをもとに、1-100cmサイズのペブルがどのように惑星周円盤に流入するのかを明らかにした。今後、それをもとにして、円盤内での衛星の集積に関して詳細な解析を行う予定である。惑星周円盤そのものに関しても、磁気回転流体不安定および円盤風のシミュレーションを始めた。引き続き、これを行うことにより、円盤の初期条件と進化の詳細が明らかになる予定である。
2: おおむね順調に進展している
衛星形成の大きな問題のひとつは、衛星を作ったはずの惑星周円盤の構造や進化がよくわかっていないことである。惑星周円盤の形成と進化は巨大ガス惑星形成過程の一部であり、惑星周円盤の不定性の大部分は巨大ガス惑星の形成過程の不定性に起因している。われわれは、惑星周円盤の磁気回転流体不安定および円盤風の流体シミュレーションを始め、計算は順調に進んでいる。また、星周円盤から巨大ガス惑星へのガスの流れのシミュレーション結果のモデル化にも成功し、それをもとに、1-100cmサイズのペブルがどのように惑星周円盤に流入するのかを明らかにした。一方で、惑星周円盤の違いが形成される衛星の姿にどのように影響するのかを調べるために、粘性が弱く、重い極限の惑星周円盤を仮定して、微衛星集積、軌道移動の統合的モンテカルロ・シミュレーションを行い、論文化できた。
惑星周円盤の磁気回転流体不安定および円盤風の流体シミュレーションを引き続き進め、円盤進化の詳細を明らかにする。星周円盤から巨大ガス惑星へのガスの流れのシミュレーションおよび進化過程を基礎にして、1-100cmサイズのペブルがどのように惑星周円盤に流入するのかのモデルを精密化する。そして、それを初期条件として、微衛星集積の重力N体シミュレーションを行うとともに、形成された衛星の潮汐軌道進化のシミュレーションも行う。これらの結果を順次モデル化して、微衛星集積、軌道移動の統合的モンテカルロ・シミュレーションを進め、衛星の多様性の起源を明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Icarus
巻: 266 ページ: 1-14
10.1016/j.icarus.2015.10.030
Astrophys. J. Letter
巻: 819 ページ: L7(7pp)
10.3847/2041-8205/819/1/L7
Astronomy & Astrophysics
巻: 589 ページ: A15(19 pp)
10.1051/0004-6361/201527069
Astrophysical J.
巻: 817 ページ: 52(16 pp)
10.3847/0004-637X/817/1/52
巻: 810 ページ: 106(10 pp)
10.1088/0004-637X/810/2/106
http://www.geo.titech.ac.jp/lab/ida/