研究課題
平成27年度は、ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムを設計して、業者に製作を依頼した。ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムは、可視光から近赤外線までをカバーするためにLi4F素材を用いて最適な分離角を得られるように設計した。また、このプリズムを可視近赤外同時カメラHONIRに装着するためのホルダーを設計・製作した。ここで製作したプリズムは平成28年度にHONIRに組み込んで試験観測を行う。また、新たな近赤外線検出器を導入するために国内企業(浜松ホトニクス)と共同で、InGaAs素子を用いた近赤外線検出器を試作した。この研究は国立天文台と共同で行った。試作された近赤外線検出器(128画素×128画素)を試験デュワーに入れて90Kまで冷却し、冷却下での検出器性能試験を行った。検出器には読み出し口を4個設け、それぞれに異なる読み出し回路を実装した。試験の結果、良好な感度と雑音性能を持つ読み出し回路を同定することができたので、これをもとにさらに大素子化に向けて開発を進めることとなった。さらに、HONIRのコリメーターレンズを収めるための冷却鏡筒を新規に製作した。並行して、既存の一露出型可視偏光観測装置HOWPolを用いたGRBの初期偏光観測を1件実施した。有意な偏光を検出できなかったが、これまでに得られているデータと合わせて、GRB初期偏光の統計的な研究を開始した。この他に活動銀河核、超新星などの突発天体の観測を実施した。
3: やや遅れている
ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムは、予備品も含めて2個を製作して平成27年度中に納入される予定であったが、業者側でプリズムの素材の入手に手間取り、さらにプリズムの貼り合わせの際に不具合が生じたため、製作に遅れが生じた。また納入されたプリズムの冷却試験により、貼り合わせの一部剥がれが生じた。そのため、平成27年度中には完成品は納入されず、繰り越しによる事業継続によって平成28年度になってからプリズム2個が納入された。仮納入された1個(冷却試験で剥がれが生じたもの)によりプリズムホルダーの製作とホルダーへの装着はできたので、最低限の目標達成はできた。近赤外線検出器の開発に関しては、平成28年度の大素子化に向けた基礎開発として、128画素×128画素の小規模素子で最適な読み出し回路の特定が行えた。こちらは予定通りの進行であった。コリメータ冷却鏡筒も滞りなく製作できた。GRBの初期偏光観測は1回成功した。有意な偏光は検出できなかったが、過去のデータと合わせて統計的な研究をする基礎データを得た。以上を総合して、プリズムの納入遅れを勘案し、やや遅れていると評価した。
平成28年度は、製作したウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムの実験室における光学性能試験および真空冷却耐久試験を行う。これによって、光学性能を確認し、真空冷却サイクルの繰り返しによるプリズムの劣化や不具合の有無を確認する。その後、プリズムを可視近赤外同時カメラHONIRに組み込み、かなた望遠鏡に装着して試験観測を行う。試験観測では、従来のウォラストンプリズムでの観測結果と比較して、性能の評価を行う。近赤外線検出器は平成27年度の開発結果を基礎として、InGaAs素子を用いた1000画素×1000画素程度のフォーマットを持つ大規模検出器を、浜松ホトニクス、国立天文台などと共同して開発する。開発された検出器は実験室での性能評価の後、かなた望遠鏡に装着して試験観測を実施する。並行してGRBの初期偏光観測を実施する。また、活動銀河核の偏光モニター観測を実施して、相対論的ジェットの磁場構造の研究を行う。さらに、超新星などの突発天体観測を実施する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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