研究課題
ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムをかなた望遠鏡の可視赤外同時カメラHONIRに装着して、ガンマ線バーストとブレーザーの追跡観測を進めた。HONIRは2017年度当初にコリメーターレンズを一新することにより、全波長域にわたって消偏光度が5%未満という優れた性能を達成している。2018年度も2017年度に引き続き、ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムをHONIRの標準装着品として定常運用を継続した。この運用のための観測装置保守(冷凍機のメンテナンス、コンプレッサー修理等)を行った、HONIRを用いて、活動銀河核ブレーザーの可視近赤外線同時偏光モニターを継続した。その結果、2017年度に得られたブレーザーの偏光変動と光度変動、色変動の間の相関関係が確かめられた。HONIRを用いたガンマ線バーストの可視近赤外同時偏光観測は、2件(GRB180720B、および、GRB181110A)実施した。そのうちGRB180720Bにおいては、1時間程度のタイムスケールで変動する偏光成分が検出されており、現在、その物理機構について考察を進めている。また、1280×1280画素のInGaAs近赤外検出器の新たな試作品をかなた望遠鏡に装着して試験観測を実施した。この結果、全体的に読み出し雑音が低減していることを確認した。試験観測結果はメーカーにフィードバックした。さらに、すばる望遠鏡でガンマ線バーストの高解像度近赤外線追跡観測を行うことを計画し、そのために、補償光学システムの一環であるレーザーガイド星システムの機能強化を行った。具体的には、新しい高性能レーザー(別途購入)を空に打ち上げるための光路設計を行い、製作に必要な物品を購入した。
2: おおむね順調に進展している
ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムを装着したHONIRの定常運用を継続し、活動銀河核ブレーザーの可視近赤外線同時偏光モニターを継続した。ガンマ線バーストの偏光観測は2件実施することができた。そのうち1件(GRB180720B)においては短時間の偏光変動が検出され、一露出型偏光観測装置の威力を発揮することができた。InGaAs近赤外検出器の開発を継続し、広島大学かなた望遠鏡に装着した試験観測の結果をメーカーにフィードバックした。また、すばる望遠鏡によるガンマ線バースト追跡観測を計画し、そのための装置整備を行った。以上の成果を判断して、当初計画通り、おおむね順調に進展していると判断できる。
ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムを装着した可視近赤外同時カメラHONIRを用いて、ガンマ線バーストの可視近赤外線同時偏光観測を行い、相対論的ジェットの磁場構造および放射機構の解明を試みる。強い偏光が検出された場合は、ウェッジド・ダブル・ウォラストンプリズムの一露出偏光機能を活かして、偏光の時間変動を追跡観測する。可視近赤外残光に偏光が検出されなかった場合は、上限値を算出して、ガンマ線バーストジェットの偏光特性を調べるデータとして活用する。また、活動銀河核ブレーザーの可視近赤外線同時偏光モニターを継続し、ブレーザージェットの偏光の波長依存性、時間変動、光度・色変化との相関などを調べ、統計的にジェット構造の解明を目指す。さらに、新星、X線連星、パルサーなど各種突発天体の偏光観測を実施して、偏光の観点から、これらの爆発現象の物理の解明を試みる。InGaAs検出器開発をさらに進め、より低雑音(読み出し雑音10電子以下)の読み出しシステムを持った検出器を作成する。開発した検出器は、かなた望遠鏡HONIRに装着して本格観測に使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 4件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 14件、 招待講演 10件)
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