研究課題
【観測的研究】 シミュレーションモデルを「すざく」衛星で観測した複数の2型セイファート銀河のX線スペクトルに適用し、(1)隠された中心核の活動性、(2) 周辺の物質分布への制限、特に、clumpyな構造している可能性を示した、などの成果を出した。また、活動銀河核の構造と成長を明らかにするために、成長途中の隠されたAGNの探査するとともに、吸収を受けた活動銀河核の観測を行い、その結果を随時、公表した。「ひとみ」衛星では、硬X線望遠鏡の地上較正試験、軌道上較正観測に関する結果等を論文として発表した。これに加えて、試験観測中に行った観測データを解析し、その結果を論文として公表した。中でもNGC1275からの鉄輝線は過去最高の精度で輝線幅(500~1600 km/s)を決定することができ、周辺物質の位置に制限を与えた。【硬X線望遠鏡の開発】ウォルター型基板表面へのX線反射膜の形成では、レプリカ法で作った成膜面に欠損ができるなど、品質が安定しないことが明らかとなった。これは熟練の技術が必要であること意味している。X線望遠鏡には数1000枚を超える反射鏡が必要であり、良質な表面を容易に形成する必要がある。そこで、以前、共同研究者と開発した方法を発展させて、反射面を成膜することとした。目視では、欠損なく良好な面が形成されていることを確認していている。ハウジング内での鏡の位置決めでは、昨年度出た課題に対応することで1/4周反射鏡の位置決めを1μm以下の精度で行う手法を開発した。【観測的研究】【硬X線望遠鏡の開発】の成果を19編の雑誌論文(内18編査読有)に、そして、学会等で20講演発表した。
2: おおむね順調に進展している
「ひとみ」衛星搭載硬X線望遠鏡(HXT)の製作にかかる技術や較正試験の結果を論文として公表するとともに、応答関数も世界に向けて公開し、「ひとみ」衛星搭載硬X線望遠鏡に関する当初の目標は達した。X線天文衛星を用いた観測的研究では、「ひとみ」衛星を喪失したものの、「ひとみ」で取得したデータを解析し、これまでにその成果をNatureに2編、PASJに特集号として報告した。この他にも米国の天文学会誌にて発表している。また、活動銀河核の周辺構造と進化の研究に関しては、モンテカルロシミュレーションをベースにしたモデルで「すざく」衛星で観測した2型セイファート銀河のX線スペクトルを再現し、活動銀河核本体ならびに周辺物質に関する情報を得た。また、活動銀河核の進化の解明につながる、成長途中の活動銀河核の探査についても成果を出しつつある。硬X線望遠鏡開発は、基板製作、反射面形成、精密組み上げの3つから構成される。基板製作に関しては金型を熱膨張率の小さなものに変更することなどで成型後のCFRP基板の寸法精度が向上し、新規開発はほぼ終了した。反射面形成では、レプリカ法による成膜法の開発を試みたが、技術的困難さ等からこの手法を断念し、新しい方法での成膜技術を試みている。精密な組み上げ法に関しては、1層の1/4周ウォルター型反射鏡の高精度配置にかかる要素技術を習得し、ほぼ予定通り開発が進んでいる。これまでの研究で、基板の成型、表面平滑化、ハウジング内での位置決めに対して技術的な目処がほぼついたと考えている。以上のことより、「おおむね順調に進展している」と判断した。
観測的研究では、活動銀河核の成長の鍵となる成長途中の隠されたAGNの探査を進めていく。これと並行し、鉄輝線に着目してシミュレーションモデルとの比較を行い、鉄輝線の形状と強度に関するシミュレーション結果をデータベース化し公開する予定である。連続成分と鉄輝線のシミュレーションモデルを公開することで、将来の硬X線まで含んだ広帯域観測ならびにX線カロリメータ等による鉄輝線の詳細観測に対応することが可能となる。望遠鏡開発では、昨年度始めた新しい成膜技術の確立を目指す。この技術での成膜法には、いくつかの製作法があるため、どの方法がもっとも容易でかつ、性能の良い製品ができるか調査する。この手法が確立すればレプリカ法に変わる成膜技術となるであろう。このように製作したウォルター型反射鏡をハウジング内で積層する。これは本研究課題の最終目標である。積層技術については、これまでCFRP平板を用いて開発を進めてきた。この技術をウォルター型反射鏡に適用する。最終的な評価をSPring-8にて実施する予定である。ここで開発した要素技術は、将来の広帯域X線高感度撮像観測に利用可能であり、今後は飛翔体実験を視野に入れて開発を進めていく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 14件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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