研究課題
2年次の2016年度には、以下を進めた。1) メキシコの標高4600 mサイトに建設されたLarge Millimeter Telescope (LMT) 50 m鏡に搭載する波長2ミリ波帯のヘテロダイン受信機システムの開発製作を進めた。受信機デュアーの冷却、真空性能、受信機の雑音性能、広帯域性能や、導波管バンド分離ミキサーユニットのサイドバンド分離性能、受信機出力の安定性評価などを行い、十分な性能を持つことを確かめた。LMTに最適化した光学系での、ビームパターン、能率などの評価も実施した。2) 分光システムについては、RPG社製のXFFTSボードを追加調達し、観測帯域幅を拡張した。また、分光系や時計装置、制御計算機を含めた実験室でのデータ取得試験を進め、観測仕様(広帯域モード)でのデータ取得に成功した。さらに、既存のソフトウエアー(CASA)上で、解析処理ができることを確認した。周波数変調LOシステム(FMLO)も個別に評価を行うとともに、分光システムとのインターフェース方法も決定した。受信機と分光計、そしてリモート制御系も含めたシステム一式をほぼ完成させた。3) LMTを運用するメキシコの研究機関(INAOE)や米国マサチューセッツ大学(UMass)と協議を重ね、LMTへの搭載プランをほぼ確定した。また、受信機や分光計とLMT望遠鏡側との詳細なインターフェースについても決めた。一方、受信機にトータルパワーを図る機能を追加する必要が生じたため、その部分の機能追加を次年度に行い、受信機、分光計の実験室での最終試験を行うこととした。さらに、研究協力の枠組みを、覚書という形で構築することで合意した。INAOE側の装置受け入れ態勢も確認できた。 また、ハワイのJCMT15mサブミリ波望遠鏡などを用いて、明るいサブミリ波銀河サンプルの構築を進め、z>4以上の天体数を増加させた。
2: おおむね順調に進展している
1)受信機、分光系等の装置の開発導入が進み、その動作を個別に確認し、仕様を満たす性能を実現していることを確認できた。現時点で、装置の性能面では当初計画通りであり、本計画を実行する上で障害となる項目はない。これらを、メキシコの標高4600mサイトに建設されたLarge Millimeter Telescope (LMT) 50m鏡に、それらの装置を搭載する計画であるが、関連研究機関(IMAOEとUMass) と協議を重ね、装置の設置場所やインターフェースを決め、かつその搭載スケジュールについても合意ができた。それらのスケジュールもほぼ当初計画にそったものになっており、バックアップとして考えていた45m鏡搭載というプランは棄却できた。2)明るいサブミリ波銀河のサンプル作りも順調に進んでいる。また、装置を搭載した後の観測プランを立案し、LMT関連機関の科学者とも協議を開始している。次年度以降の試験観測後の本観測開始までには、観測プランを確定することができると判断しており、この部分においても計画通りに進んでいる。3) LMT関連機関との協議では、新たに受信機のトータルパワーを測る機能を追加するよう要求があった。これについては、そもそもトータルパワーを測るための出力分配部を事前に用意してあったので、受信機の改造なしに、パワーメータなどの装置を用意して対応すれば解決する問題であると考えられる。この部分を用意し、受信機を完成させたのち、分光計と組み合わせた総合試験を実施する計画も、LMT関連機関と既に合意済みである(H29年度早々に、LMT関連機関から技術者を日本に招聘し実施予定)。これらは、次年次にすぐ対応することで、本計画に遅れをもたらす要因ではないと考えられる。
3年次以降は、以下のことを行う1) 受信機と分光計を組み合わせ、日本国内で最後の総合調整を速やかに行ったあとに、システム全体をメキシコLMTサイトに発送する。LMT50m鏡に搭載して、受信機、分光計で各種性能(雑音性能、広帯域性能、導波管バンド分離ミキサーユニットのサイドバンド分離性能、受信機出力の安定性、遠隔制御など)が再現するか単体での評価試験を行う。また、LMT搭載試験プランに基づき、LMT搭載後の総合試験を行い、End-to-End(受信機への入力信号から、分光計の出力まで)で信号が正常に受信され分光されるかのテストや、遠隔制御系、LMT望遠鏡観測ソフトウェアーとの通信が正常に行われているかの試験も実施するLMT望遠鏡の観測システムとのインターフェースを確認し、望遠鏡の駆動と連携して、データ取得ができるか、リモート制御が正しく行われるかのテストも実施する。引き続き、微弱で線幅の広い輝線を検出するために田村が考案した周波数変調LOシステム(FMLO)の開発を進め、LMTに搭載する。2) 実際の銀河系内天体等を観測し、波長2mmでの観測感度、ビームパターン・ビームサイズ、開口能率、望遠鏡の指向精度、分光出力の安定性やベースラインの安定性、強度校正の精度を調べる。また、試験観測を行い、観測効率等を調べ、当初予定していた観測計画へフィードバックをかける。LMT側の共同研究者とも話し合い、本観測プランの確定し本観測をスタートさせる。これまでのサブミリ波銀河のサンプルに加え、JCMT/SCUBA-2による広域観測、さらにはALMAでのサーベイ観測なども実施し、サンプル拡大を継続して進める。3) 近い将来の拡張として、125 GHzから210 GHzまでをカバーする超広帯域のミキサー(ALMAのband-4とband-5を統合)の開発なども進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 16件、 査読あり 15件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件)
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