研究実績の概要 |
フェルミ衛星やチェレンコフ望遠鏡により,GeV・TeVの銀河宇宙線陽子の情報が入手可能になった.一方,MeV宇宙線陽子のデータは地球のごく近傍を除いて未だ皆無である.この状況で,「すざく」の観測から申請者は,銀河面の中性鉄(6.4keV)輝線の起源がMeV陽子である事を発見した.そこで本研究は下記の目的の元,精密X線分光によるMeV銀河宇宙線陽子の研究を開拓する. すざく衛星で得た,銀河面の中性鉄(6.4keV)輝線の起源がMeV陽子である事を示す論文を出版した.次にひとみ衛星搭載X線CCDカメラの地上キャリブレーションを行った.新たに開発した回転型X線発生装置を用いて,京大にて2014年度に取得したX線データの解析を行った.F-K,Ge-L, Ge-K, Fe-55, Ti-Kの各蛍光輝線での電荷転送効率,電荷注入によるゲイン回復とゲインのCCD面上での位置依存性を補正する関数を考案し,そのパラメータを用いた.この結果は修士論文としてまとめられた.得られた結果は,全世界のユーザーが使用する解析ソフトに組み込んだ.次に,ひとみ衛星の総合試験に参加し,熱真空や振動衝撃によって主にX線CCDカメラの性能に変化がないことを確認した.種子島に輸送後の試験も行い,X線CCDカメラの性能に変化がないことを確認した.2月17日に打ち上げを行い,ひとみ衛星と名付けられた.軌道上での天体および較正線源を用いたX線CCDカメラのキャリブレーションを行った.幾つか問題は発見されたが,観測に大きな支障はない.一方で,3月末に通信異常が起こったため,現在はひとみ衛星の観測ができない状況にある.
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