本研究の目的は、茨城県東海村のJ-PARC加速器・ハドロン実験施設で計画しているCOMET 実験において、現代的・革新的な検出器を用いてミューオン-電子転 換過程を探索し、素粒子標準模型(SM)を超える物理(BSM)を発見することである。予算的な施設建設の遅れにより、実験遂行には至らなかったが、本研究の大きな課題である検出器の開発は大きく進展した。ストローチューブ飛跡検出器の開発では、ビーム試験データの解析による性能評価を完了させた。特に、XT曲線と位置分解能の理解に重点を置き、実機設計に必要とする動作の理解に到達した。その結果に基づいて実機の基本設計を完了させ、建設を開始した。ストローチューブの量産は完了した。電極フィードスルー部の固定手法ほか、残されていた開発・設計が完了し、建設が進行中である。信号読み出し・波形記録回路であるROESTIについては、放射線耐性・ファームウェア・較正手法に関する開発を完了させ、試作機を製作した。その性能試験が進行中であり、大きな問題がなければ実機として採用する。電磁カロリメータの開発では、前述と同様にビーム試験データの解析による性能評価を完了させた。試作機を用いた宇宙線・LEDによる較正手法を含め、基本的な開発を完了させた。実機建設のための低コスト化には工夫の余地がある。特に、相対的に廉価なLYSO結晶を入手し、その性能評価を進め、良好な結果を得た。信号読み出しの開発では、前置増幅回路の開発を完了させた。また、波形記録回路は前述のROESTIと開発要素を共有しており、開発を完了させた。検出器の開発と並行して、本実験を想定したトリガーの研究も大きく進展した。アルゴリズムの最適化にまだ余地があるものの、十分な性能を発揮することを示した。
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